毎年、年末年始になるとお餅をのどに詰まらせて窒息状態に陥る事故が増える。東京消防庁では関連する特集ページを公開し、注意喚起を行っている。2015年までの統計データによると、過去5年間では毎年100人以上が窒息事故で救急搬送されており、多くは12月から翌年1月に集中しているという。
餅による窒息事故を防ぐにはどのようなことに注意をすればよいのだろうか。また、万が一、家族が餅を詰まらせる場面に遭遇したら、どのように対処すればよいのだろうか。医学博士の清益功浩氏がAll Aboutの『餅による窒息事故の原因・予防・応急処置』で次のように解説している。
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餅はなぜつまりやすいのか?
清益氏によると、餅は冷えると硬くなる上、くっつきやすさも強くなる特性があり、調理後に熱くなった餅でも、口に入れていると体温程度まで温度が下がる。冬は室温が低いために、さらに温度の低下が早まるので注意が必要だという。つまり、餅は食べる前・食べている時・飲み込む時で硬さやくっつきやすさが変わり、思っていた以上にのどに詰まりやすくなってしまうのだという。
なぜ高齢者の事故が多いのか
清益氏によると、奥歯がなくなったり入れ歯になると、顎を安定させにくくなり、かむ力と飲み込む力が低下するので、食べた物をしっかりとかんで、スムーズに飲み込むことが難しくなるのだという。唾液の出が悪いことも、のどに餅を詰まらせやすい原因になるという。
餅による窒息事故を防ぐには
餅による窒息事故を防ぐために、以下の3つの点を注意すべきだと清益氏は述べている。
- 食事前に会話などをして口の準備運動をしたり、スープなどでのどを潤してから食べること
- 餅はなるべく小さく切って、口の中で、しっかりとかんで、唾液と十分に混ぜながら食べること
- 口の中の分をすべて飲み込んでから、次の一口を食べること
窒息の応急手当はどのようにすればよい?
しっかりと予防しても、のどに詰まってしまったら?餅に限らず、異物がのどに詰まった時の処置方法を覚えておきたい。
「まずは、窒息状態かどうかを判断します。窒息状態ですと声が出ませんので、多くの場合はのどに手を当てて呼吸ができなくなったことを示す動作をします。これを、チョークサインを言います。その場合、「喉が詰まったの?」と尋ね、うなずくようなら窒息と判断します」
咳をすることができれば、できるだけ咳を続けさせることも大切。咳をすることで異物をのどから除くことができるという。
■腹部突き上げ法(ふくぶつきあげほう)
- 窒息した人を後ろから抱えるように腕を回す
- 片手で握り拳を作り、その親指側を窒息者のへそより上で、みぞおちの十分下方に当てる
- その手をもう一方の手で包むように握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げる
「この方法は、妊婦や乳児には行いません。また、腹部を傷める可能性がありますから、実施したことを救急隊に伝えることが大切です」
■背部叩打法(はいぶこうだほう)
- 背中を叩きやすいように窒息者の横に回る
- 手の付け根で肩甲骨の間を力強く、何度も連続してたたく
この方法は、横になっている人が自力で起き上がれない場合にも有効。これらの2つの方法は、どちらかが効果が無い場合は、もう一方の方法を行うのがよいという。
餅に限らず、窒息の場合は、時間との勝負。清益氏は、まずは119番に通報するように誰かに頼むこと、「窒息」というキーワードをしっかりと119番に伝えることの重要性についてもアドバイスしている。
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