佐川急便の社員らが、知人に駐車違反の身代わり出頭を依頼していたという事件が報道されています。複数の人が書類送検や逮捕される事態に至っており、佐川急便では調査委員会を設置して対応するようです。
報道をみると、運転手が駐車違反をする、係長等の人物(どのような立場か分かりませんが、仮に上司としておきます)が知人に運転手の身代わりとして出頭させていたという事件のようです。このように3名の人物(運転手、上司、身代わり)が登場するのですが、これらの人はどのような処罰を受けるのでしょうか。
犯人隠避罪とはどのようなもの?
このような事件で成立する可能性のある犯罪は、犯人隠避罪です。犯人隠避罪というのは、罰金刑以上の罪にあたる人がいる場合に、その人が警察や検察などに発見・身柄拘束されないような行為をすると成立する犯罪です(ただし、場所を提供してかくまう場合は除きます。この場合は犯人蔵匿罪です)。
今回は、駐車違反の事件ですが、駐車違反は、道路交通法で15万円以下の罰金刑が定められていますので、運転手も「罰金刑以上の罪にあたる人」といえるわけです。
そして、身代わりは、自分が犯人ですと述べて警察に出頭することで本当の犯人(厳密にいうと被疑者)が誰なのかを分からなくさせていますから、犯人を隠避したことになり、このようにして犯人隠避罪が成立します。
他人に犯罪をするようそそのかすと処罰の対象に
次に、上司は、自分自身が警察に対して隠避にあたる行為をしているわけではありませんので、犯人隠避罪は成立しなさそうです。しかし、上司が事件の構図を描いているということですと、身代わりの犯人隠避行為の共犯(共謀共同正犯)が成立する可能性があります。共謀共同正犯というのは2人以上の人が意思を通じ合って利用し合い、自分の犯罪を実現することです。この場合は、共犯者全員に同じ犯罪が成立します。
もっとも、報道では、上司は犯人隠避教唆で逮捕されているようです。
教唆とは、そそのかす、ということで、教唆犯というのは、他人に犯罪をするようそそのかして、その人が犯罪を犯した場合に成立する犯罪です。この場合は正犯(今回でいうと犯人隠避)と同じ刑を科されます。
次に運転手はどうでしょうか。運転手の知らないところで身代わり行為が行われていれば処罰されることはありません。しかし、運転手が、他人に対して「自分の身代わりになってくれ」と依頼して出頭させた場合は、犯人隠避罪の教唆犯や共謀共同正犯が成立します。
このように、今回の事件では、運転手、上司、身代わり運転手の全員が処罰される可能性があります。
道路交通法違反のような事件でも犯人隠避罪で処罰されますので、安易に身代わりを依頼すると自分のみならず、依頼した相手も犯罪者にしてしまうことになります。依頼したり、引き受けることは絶対にNGと心得るべきです。