千葉大学医学部生の学生が女性に対する乱暴を働いたということで逮捕され、その後、その場にいた医師も逮捕されました。学生達の被疑事実は集団強姦罪、医師については準強制わいせつ罪と報道されています。
集団強姦罪は、2人以上の集団で女性を強姦した場合に成立する犯罪で、最低4年の懲役刑と定められている大変重い犯罪です。
準強制わいせつ罪は、泥酔してわいせつ行為の被害を受けていることを認識できない状態や抵抗不能な状態の人に対して性的な行為(ただし性行為そのものは除く。この場合は強姦罪になります。)をすることです。この場合は6か月以上10年以下の懲役刑と定められています。まだ捜査段階ですから、彼らが有罪かどうかは分かりません。
匿名か実名か、基準はあるのか?
ところで、日本の場合は、逮捕された被疑者の実名を報道するのが通例となっており(例外もありますが)、マスコミが被疑者の実名を知るのは捜査機関(警察や検察)を介してです。しかし、千葉大の事件では、当初、千葉県警が被疑者の実名公表を控えていました。
警察が実名公表をするか否かの基準を設けているのか、私は知りません。ただ、肌感覚として、警察官が逮捕された場合は実名公表が通常よりも少ないように感じており、身内には甘いのかななどと思っています。
一方、捜査機関にせよ、ここから情報提供を受けるマスコミにせよ、本当に被疑者の実名を公表することが必要なことなのか、というのは一弁護士として感じるところがあります。
この点、裁判例は、被疑者にもプライバシー権や名誉といった法的に保護すべき権利や利益があることを認めつつも、犯罪報道が公共の利害に関するものであることを理由に実名公表を容認する傾向にあります。つまり、実名公表をしても違法ではないと判断している裁判例が多いということです(もっとも、不正確な報道をした場合等には違法であると評価されたりします)。
「実名公表」について議論はあるべき
実名公表については、様々な議論があり、事件の態様も色々で十把一絡げに言うことはできないところもあるのですが、とはいえ、例えば、東京都の〇×というビルで殺人事件が発生しました、というニュースを報道するにあたって、被疑者の名前、年齢、性別、職業、住所まで報道することがどのような公共の利害に関わっているのか、もう少し考え直してもよさそうです。ニュースを見聞きした人は、せいぜい、被疑者の年齢、性別と事件のあらましの情報を得ることができれば、犯罪の内容についてある程度イメージを持てるのではないでしょうか。
そうすると、むしろ、匿名が原則で実名公表が例外というのが適切な公表の在り方ではないかと感じています。もちろん、例外をどの程度認めていくかは様々な議論があって然るべきだと思います。
千葉大の事件に話を戻すと、警察が当初何らかの意図で実名を公表していなかったことは明らかのように思います。
ただ、他の事件では実名公表しているから、今回も実名公表しろということではなく、むしろ、今回の事件をきっかけとして、原則匿名にすべきでないかという議論も出てきていいのではないかと感じているところです。