カジノを含む統合型リゾートを推進する、いわゆる「IR」法案が6日、衆議院本会議で可決した。地域活性化や税収増加を期待する声がある一方で、ギャンブル依存症の元患者や家族らからは依存症対策が不十分などという懸念の声があがっている。依存症患者の家族らでつくる「ギャンブル依存症問題を考える会」は、IRを推進する議員連盟に対し、ギャンブル依存症対策を求める要望書を、およそ1万5000人分の署名とともに提出したという。
懸念されているギャンブル依存症とはどのようにしてなるのだろうか。またどのような人がなりやすいのだろうか。メンタルヘルスの専門医である中嶋泰憲氏がAll Aboutの『ギャンブル、買物、忘れてはいけない依存の危険』で次のように解説している。
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ギャンブル依存症、どういう人がなりやすい?
中嶋氏によると、一般に、依存に陥りやすい人は心に問題があり、抱えている問題には以下のようなものがあるという。
- 心が不安定で、気分が落ち込みがち
- 孤独で、絶望感が強い
- 劣等感を強く感じる
- 日々の生活でストレスが大きい
- 成長期に親が離婚したり、亡くなられた
- 児童虐待を受け、心が傷ついている
依存すると抜け出すのが困難なのはなぜか
一旦、依存が完成してしまうと、そこから抜け出すのは困難。依存の背後にある心の不安感、抑うつを解決するために、ギャンブルが必要不可欠となってしまうからだと中島氏は述べている。
「ギャンブルをする際のスリルや興奮、気分の高揚感が、一時的に、心の不安感を取り除き、うつな気分を癒します。しかし、しばらくすると、再び、心は不安定になり、それを解決するために、またギャンブル、といった具合に悪循環が続いていきます」
依存から抜け出すにはどうしたらよいのか
中島氏によると、ギャンブル依存の人はなかなか精神科に来ないことが多いが、本人に治そうという決意がないと、治療は困難だという。
「依存から抜け出す手段としては、ギャンブルやショッピングに溺れてしまった背後にある心の不安感や気分の落ち込みをお薬を用いて軽減させます。そして、心理療法のカウンセリングを受け、依存の原因となっている心の問題を理解します。また、紹介してもらったり、インターネットで検索などして、自助グループに参加するのも良いと思います。そこでは、自分の体験を分かち合い、互いに支え合って、依存からの回復を目指します。ただ、何と言っても、成功への鍵は、本人が依存の現状を把握し、何としても止める必要があると認識することです」
家族としてできることは?
中島氏によると、家族で楽しい時間を過ごせれば、何かに依存する必要はなくなるという。
「例えば、夫がギャンブルに溺れるようになったとします。妻としてできることは、まず、今のままでは夫婦の生活が成り立たなくなるので、ギャンブルをやめるように説得します。次に、いつからギャンブルをするようになったのか、また、そうなった原因は何かを理解するよう試みましょう。そして、止める事が出来るように手助けしていきます。例えば、ギャンブルをする代わりに、一緒にカラオケに行ったり、映画に行ったりといった具合です」
うっかり道を踏み外してしまったときに大切なのは、正しい道に戻ろうという自分自身の意思と家族の支えであることを覚えておきたい。
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