政府は29日、薬剤耐性(AMR)に関する普及啓発活動を推進するため、タレントのJOYさんと篠田麻里子さんを「薬剤耐性へらそう!」応援大使に委嘱した。

薬剤耐性菌は抗生物質が効きにくい大腸菌などのこと。委嘱式では、篠田さんは「“薬剤耐性”という言葉は馴染みがないものでしたが、効くはずの薬が効かなくなるということはとても怖いことだなと感じています」と述べ、また、結核で入院した経験のあるJOYさんが「医師の指示に従って飲み切ることが大切ですが、それができていない人も多いと思います。そういう人達に自分達がメッセージを発信していきたい」と話した。

 

薬物耐性菌に関しては、11月に福岡県久留米市の病院で、入院中の患者12人から抗菌薬に耐性のあるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が検出され、1人が死亡している。世界でも薬物耐性のある菌が増えており、抗菌薬の効かない感染症が増加する可能性もある。

 

この薬物耐性菌とは、どのようなもので、身を守るにはどのようにすれば良いのだろうか。医師の今村甲彦氏がAll Aboutの『スーパー耐性菌とは…「悪夢の耐性菌」の予防と治療法』で次のように解説している。

 

**********

 

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は2016年、五輪開催を目前に控えたリオデジャネイロの海岸で検出された。これは、「スーパー耐性菌」「悪夢の耐性菌」とも言われ、今村氏は解説をしている。

  

「腸内細菌科細菌」とは

今村氏によると「腸内細菌科細菌」とは、我々の腸内にいる「腸内細菌」とも重複する部分もあるが、違う範疇に分けられるものだという。腸内細菌は、ヒトの消化管に共存している微生物の集団。一方、腸内細菌科細菌は、グラム陰性桿菌であることなど条件があるもの。大腸菌や肺炎桿菌が腸内細菌科細菌で、腸内細菌全体の1%も満たない。

  

腸内細菌科細菌は通常、ヒトや動物の体内に常在し、腸管内では病原性はない。しかし、院内感染などによって、尿路感染症、呼吸器感染症、菌血症、手術部位感染症などを引き起こすことがあるという。

  

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌とは

通常はこうした感染症に対しては抗生物質で対応するが、近年、これまで有効だった抗生物質に耐性を持つ菌が増えてきており、これらを「耐性菌」と呼ぶ。

  

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌とは、広域抗菌薬の代表といえるカルバペネム系抗菌薬に耐性を持つ腸内細菌科細菌。あらゆる菌に対して耐性を持つため、「スーパー耐性菌」と呼ばれる。

今村氏によると、「カルバペネム系抗菌薬」は抗生物質の中でも「切り札」的な存在であり、「この抗生物質が効かない菌が存在するということは、医療者からみると尋常ではない」としている。

  

スーパー耐性菌の治療法・進化しつづける菌の脅威

治療法については、一般的な抗生物質では歯が立たないため、スーパー耐性菌が耐性を獲得していないメカニズムで菌を攻撃する「コリスチン」や「チゲサイクリン」という抗生物質が有効とされている。ただし、現在効果がある抗生物質も、使用頻度が増えるにつれ耐性菌が増えてくるものと考えられているという。

   

「新薬が開発される可能性もありますが、新しい抗生物質にも菌は耐性を持つことが予想されます。菌自身も耐性をつくり、生き抜こうと必死に抵抗しているのです。さらに注意すべき点は、近年、菌は進化を味方につけて、抗生物質より優勢になってきているということです。近い将来、菌の治療法に難渋する事態が増えてくることが予想されます」

  

耐性菌の予防法・個人でできる対策法

今後、日本でも増えてくることが考えられるという。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌は、患者の移動とともに医療機関で拡散していくので、医療機関での感染対策が最も重要と今村氏は指摘する。

  

個人でできる対策としては、抗生物質を適正に使用することを今村氏は挙げる。また、安易な抗生物質の使用は、耐性菌を増やすことにつながるという。

  

さらに、水質が保障されていない海や川ではどのような菌が存在しているかわからないので注意してほしいと今村氏は述べている。衛生状態の良くない国では、通常の場所でも汚染されている可能性があるので、海外旅行など渡航の際に注意をしたい。

  

※「抗生物質」は厳密には天然由来の抗菌薬を指すが、本記事内では人工的に合成された抗菌薬も「抗生物質」として表記し、解説している。

  

【関連リンク】

スーパー耐性菌とは…「悪夢の耐性菌」の予防と治療法