厚生労働省は14日、受動喫煙のない社会を目指すロゴマークを発表。マークは、受動喫煙防止対策の必要性という共有認識を拡大し、受動喫煙のない社会を目指すことを目的に作成され、企業や個人が自由に使える。
また、厚労省は同日、2015年の国民健康・栄養調査を公表。たばこを毎日もしくは時々吸うという人の割合が18.2%(前年比1.4ポイント減)で過去最低となった一方、20歳以上の非喫煙者である男女の41.4%が、過去1カ月間で飲食店で受動喫煙を経験したと回答したという。
政府などは2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて受動喫煙の規制強化を検討しているが、受動喫煙とはどれほどの影響があるのだろうか。医師らがAll Aboutで次のように解説している。
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タバコの煙にはどんな有害成分が含まれている?
医学博士である清益功浩氏によると、タバコの煙には主にタール、ニコチン、ピレンといった粒子とアセトアルデヒド、窒素酸化物といった4500種類以上の化学物質が含まれているという。
また、タバコの煙は、主流煙(タバコを吸う人の中に入る煙)と副流煙(タバコの先から出ている煙)に分けられ、この副流煙によって喫煙している状態を「受動喫煙」と言い、自分は吸っていないのに、タバコの煙が体に入ってくる状態となる。
消化器系の専門医である今村甲彦氏によると、副流煙はフィルターを通していない煙で、タバコを吸うときと違い不完全燃焼の状態で発せられるので、喫煙者が吸っている煙よりはるかに多くの有害物質を含むという。
その有害物質の一つが一酸化炭素。練炭など炭素を含むものが燃焼する際、酸素が不十分な場合に不完全燃焼を起こして発生する有毒ガスだ。ニトロソアミンという発癌物質も含まれ、副流煙に含まれているニトロソアミンは主流煙の50倍もあるといわれている。
受動喫煙による健康被害とは?
■すぐに起こる症状
タバコを吸う人だけでなく、タバコを吸わない人も受動喫煙により、命や健康に影響が及ぶことが明らかになっている。今村氏によると、受動喫煙によってすぐにあらわれる症状としては、目やのどの痛み、咳、心拍数の増加、手足の冷えなどがあるという。
■長期的な喫煙で起こる症状
今村氏によると、長期的には、心筋梗塞や狭心症で死亡する可能性が1.3~2.7倍に上昇するほか、脳卒中や喘息などのさまざまな病気を発症する危険性が高くなることもわかっている。たとえば一酸化炭素はニコチンとともに動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすといわれており、酸素の200倍以上も血液に溶け込みやすく、酸素の運搬を妨害し、持久力や作業効率を低下させる作用などもある。
■子どもや妊婦への影響は
妊婦や子供は、影響が大きいので特に注意が必要だと今村氏は述べている。妊婦では流産や早産、新生児の低体重化などが問題になっている。特に親が吸っているときの子供への影響が心配され、将来の子どもへの成長にも懸念が生じているという。子供では呼吸器系の病気の他、言語能力の低下や注意力が散漫になるなどの影響があることや、親が喫煙している環境で育った子どもは、大人になると動脈硬化の危険性が高くなることも指摘されている。
■美容への影響
美容面への影響も忘れてはいけない。美容皮膚科医である吉田貴子氏によると、喫煙による肌のダメージは深刻なのだという。一般的に、ヘビースモーカーでは5倍程度シワの発生頻度が高くなり、50歳で65歳程度の肌になると言われ、紫外線障害と同じ程度のシワを形成すると言われている。肌のために摂取したはずのビタミンCも、喫煙によって生じた活性酸素の消去のために大量に消費されてしまうので、健康な肌を保つことは難しく、やつれた印象や肌のくすみなど、喫煙者独特の顔を「スモーカーズフェイス」などと呼ぶこともあると吉田氏は指摘している。
1988年以来、「タバコのない五輪の実現」を目指している
吉田氏によると、1988年以来すべての五輪は、タバコの広告がなく、受動喫煙もない環境で開催されているという。2020年、世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は、タバコのない五輪を実現しようということで合意しており、2020年の東京も例外ではない。
五輪までに禁煙をするなら
自分のためであることはもちろん、五輪のために集まる多くの人々のためにも、禁煙を始めてみてはいかがだろう。
タバコに含まれるニコチンは、非常に依存性の高い薬物で、喫煙習慣によって生じるニコチン中毒・依存症には心理的依存と物理的依存がある。清益氏によると、ニコチンは肺から血液を通して脳内に運ばれ、脳内に作用するとドーパミンという快楽を与える物質を放出するので、その快楽のために、ニコチンをさらに吸収したくなり、悪循環に陥るという。そんなタバコをやめるための3つの心得について清益氏は次のように述べている。
1.セルフコントロール
意志が強ければすっぱりと依存症状に打ち勝てるが、難しい場合は徐々にタバコの本数を減らしていくことで、依存症状から離脱していく。
2.周りの協力
禁煙宣言して、周りの方にも協力してもらうのも1つの方法。自分が吸っていることを指摘してもらうことで、本数を減らす。
3.医療機関受診
禁煙外来では生活環境などの見直しを行い、禁煙補助薬を使用して禁煙率を上げる。
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