去る11月6日、明治神宮外苑で行われていた「TOKYO DESIGN WEEK2016」にて木製の展示物が火災を起こし、5歳の男児が死亡するという大変痛ましい事故が起こりました。
12日時点での報道によると、この展示物は、日本工業大学の学生によるもので、火災の原因は展示物内部に設置されていた白熱灯の熱で展示物内の木屑に引火したことによるようです。
このような事故の場合に、亡くなった男児に対する法的責任は誰が負うのでしょうか。法的責任には刑事と民事の責任がありますが、後者の民事責任について考えてみます。
法的責任はあるのか?
まず、展示物に携わった学生とイベント主催者の法的責任はどうでしょうか。
展示物は、細木で組まれた立方体のものが幾つか積み重なってジャングルジムのような造形になっており、お子さんがそこに入ったりして遊べるような物でした。
このような展示物は専門家の間で意見が分かれるかもしれませんが、民法上「土地工作物」といわれるものです。そして、土地工作物の設置や保存に不完全な部分がある場合、その土地工作物の占有者は、損害賠償責任(法的責任)を負います。
本件の場合では詳細は不明ですが、主催者が神宮外苑の利用についての権限を得て、参加者に展示させていると思われます。したがって、主催者は、展示物の占有者に該当する可能性があります。
仮に占有者が損害発生を防止する必要な注意をしていたときは、所有者が責任を負います。展示物の所有者は、出展した学生ということになると思われます。
以上のほかにも、主催者は、来場者に対する契約上の責任として生命や身体に関する安全を確保する義務を負っていると考える余地もあり、そのような観点から法的責任を問われることがありますし、学生も展示の際に白熱灯を設置点灯させれば火災を引き起こすことを予見することができたといえたのであれば、一般的な不法行為責任を負うこともあります。
大学が法的責任を負うことはあるのか
では、学生が所属する日本工業大学は法的責任を負う余地はないのでしょうか。
私が接した報道をみる限り出展した学生がこの大学に所属する学生であることは明らかのようですが、その他の詳細は不明です。大学が法的責任を負うか否かは、例えば大学の教職員が今回の出展に関与しておりその過程のなかで不法行為(過失で今回の火災を引き起こしたといえること)が認められれば、大学もその教職員の使用者として責任を負うということがあり得ます。他方で、学生らが全く大学の教職員の関与なく出展を果たしていたとすれば大学が責任を負う余地はほぼないと思われます。
このように、今回の出展において大学の教職員の関与の有無や程度により、大学の法的責任の有無も判断が分かれることになります。