「私は泣いています」などのヒット曲で知られる歌手で女優のりりィ(本名・鎌田小恵子)さんが11日、死去した。64歳だった。所属事務所の公式ホームページによると、りりィさんは肺がんで病気療養していたという。
りりィさんは1972年に歌手デビュー。74年に、ハスキーな声で歌う「私は泣いています」がヒットした。女優としては、大島渚監督の映画「夏の妹」や、「3年B組金八先生」や「半沢直樹」といった人気テレビドラマにも出演していた。
りりィさんの長男はバンド『FUZZY CONTROL』のJUONさんで、『DREAMS COME TRUE』の吉田美和さんの夫。ドリカムの中村正人さんはブログで、JUONさんや吉田さんらが最期をみとったことを明かしている。
肺がんの死者数は多く、2015年の人口動態統計によると、がんによる死因の中で肺がんは男性で1位、女性も大腸がんに次いで多く、ともに増加傾向にある。りりィさんを苦しめた肺がんの症状とはどのようなものなのか。初期症状の特徴や治療法について医学博士の狭間研至氏がAll Aboutの『肺がんの初期症状とその進行』『肺がんの治療法・予防法』で次のように説明している。
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肺がんの初期症状
狭間氏によると、肺がんの初期症状として気をつけるべきことは以下の2つという。
1)長引く咳
咳は、普通の風邪や喘息などでも見られる一般的な症状なため、医療機関を受診しないケースもよくあるが、長引く咳は要注意。肺がんや肺結核への注意が必要なため、1ヶ月近く咳が続く時は、近くの医療機関を受診したい。
2)血痰
血痰(血が混じった痰)が見られる時は医療機関を受診することを勧める。咳のしすぎで喉の粘膜が少し痛んでいる可能性もあるが、基本的に、痰に血が混じることはないという。
狭間氏によると、これら2つの症状は、がん組織による気管支の閉塞や、それに伴う感染症、脆くなっているがん組織の血管からの出血が原因となって見られるものだという。
肺がんが進行すると見られる症状は
肺がんの進行に伴って見られる症状には、局所の進展によるものと、他の臓器への転移によるものに分けることができるという。
1)局所の進展による症状
肺がんが胸壁や肋骨、背骨などに浸潤していくとそれに伴う痛みが出てくる。
- 神経への浸潤による痛み
- 嗄声(声が枯れること)
- まぶたが開かない
などの症状が見られるようになる。
さらに、肺を包む胸膜とよばれる膜全体に広がったときには、胸水と呼ばれる水が胸腔内にたまり、呼吸困難感が出現することもある。
2)他臓器への転移による症状
肺は、全身の血液が集まり通過していく臓器なので、非常に転移しやすい。肺がんの場合には、脳、肝臓、副腎、骨に転移しやすいのが特徴。脳への転移では頭痛や嘔気が、骨への転移では腰痛などの痛みが見られる。
また、がんに共通する症状としては、
- 特に要因のない体重の減少
- 帯状疱疹(ヘルペス)を発症
といった症状があるといい、狭間氏は何らかの悪性疾患の存在も疑われるため、医療機関を受診することが重要だと述べている。
治癒率をあげるには
治癒率をあげるためには、早期発見・早期治療が大切。狭間氏は、早期発見のためには、初期症状に注意すると共に、年に1回の定期的な健康診断を受けることを勧めている。
肺がんの治療と最近の傾向
狭間氏によると、肺がんに限らず、がんに対する治療は、手術、抗がん剤、放射線治療という3つの治療法を、患者の状態に応じて組み合わせて行っている。肺がん治療の最近の特徴は以下の通りだという。
1)手術
昔は大きく皮膚を切開して手術を行う「開胸手術」が行われていたが、最近では胸腔鏡と呼ばれるカメラを用いた「胸腔鏡(補助)下手術」が適用される症例も多い。創部が小さく術後の疼痛が少なく、美容的にもメリットがある一方で、がんの手術で重要な根治性を損なわないことが明らかになってきたので、今後は標準的な治療法になっていくことが予想される。
2)抗がん剤
抗がん剤は、約10年前から新規抗がん剤と呼ばれる薬剤が開発されてきているという。また、分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤が、従来の抗がん剤の効果が見られない患者に用いられるようになっている。
3)放射線治療
放射線治療は従来、脳や骨への転移に対して、これ以上大きくならないように、もしくは痛みを軽減するために行われることが大半だった。しかし、近年の放射線治療機器の進歩によって、初期の肺がんであれば、画像で確認しながら放射線を照射し焼き切ってしまう根治的な治療法が行われるようになってきている。
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