#55からスタートした【K-POPの歴史を作ったグループたちの復活と現在地】シリーズ、#58はBTSの待望の新譜『ARIRANG』と、制作の裏側を描いたドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』について。世界的スターとなったBTSが直面した「何を守り、何を変えるか」という葛藤。それは30代前後のビジネスパーソンが抱える「成長痛」とも重なるのかもしれません。K-POPの王者が“第2幕の名刺”として発表したタイトル曲『SWIM』の魅力にもフィーチャーします。
【前回の記事「BTSが3年ぶりの完全体復帰に『アリラン』を選んだ理由」(#57)はこちら】
光化門でのカムバックライブを見て
編集担当・矢野(以下、矢野):ゆりこさん、ソウル取材お疲れさまでした。僕も光化門でのカムバックライブの配信を見て、王者としての堂々たるステージに圧倒されました。夜のステージなのに、あえての黒い衣装もセンスを感じましたね。
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):デザイナーのジェイ・ソンジオさんが、「リリカル・アーマー」をテーマに、朝鮮王朝時代の甲冑(かっちゅう)など韓国の伝統的な衣装をモチーフにして製作したそうです。景福宮と光化門という場所、ステージ衣装、そして今回の新譜。全てが一貫していましたね。韓国にしかないものを打ち出すからこそ、話題も感動もさらに外へ外へと広がるという現象が面白いなと思いました。
矢野:BTSに限らず、「その場所でしか生まれないもの」「その人だから生み出せるもの」を見て、体験したいんですよね、みんな。広く売れるためには、どこかクセやカドを取り除いて一般化する調整も必要ですが、“らしさ”や“ならでは”の部分があるからこそ深く愛される。
ゆりこ:そのバランスが難しいんですよね。
矢野:そうなんですよ! 実は今回、ドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』を見て、個人的にいろいろな部分に共感してしまって。特にRMさんが語っていた「何を守り、何を変えるか」という一言が刺さりました。
会社員もスターも30歳前後は「成長痛」に悩む!?
ゆりこ:Netflixで公開されている『ARIRANG』制作の裏側を描いた作品ですね。ネット上でも話題になっていましたが、HYBEのパン・シヒョク議長とメンバーが民謡アリランの入れ方について議論するシーンは会社員時代を思い出して手に汗をかきました。どんなに結果を出しても、自分がビジネスのオーナーではない限り、全てを自由にはできないという現実。私は最終的にリリースされたバージョンが“正解”だったと思うのですが、いろいろな意見があって当たり前ですよね。アーティストの素顔を見せることを目的としたファンコンテンツというより、しっかり「お仕事ドキュメンタリー」だと思いました。社会人はそれぞれに思うことがありそう。
矢野:そこなんです。僕個人の話で恐縮ですが……今年で社会人7年目になり、だんだんと任せてもらえることも増えてきたからこそ、常に目の前にある課題やミッションをいかに速く、いかに正確に成し遂げるかに必死でした。でも最近、僕が尊敬するとある人生のパイセンに言われたんですよ。「これからは自ら課題を見つけて、ゴールを設定し、進むべき方向を決めていくフェーズ」だと。
ゆりこ:言われたことも言ったこともあるような、聞き覚えのあるセリフ(苦笑)。30代に差し掛かると、急にそういうことが求められ始めるのですよね。
矢野:“会社員あるある”なのでしょうね。正直、答えのない海に放り出されたような感覚だったんです。そんな時にRMさんの言葉を聞いて「ああ、世界的なスターである彼らも、僕と同じように『何を選び、何を正解にしていくか』でもがいているんだ」と、ものすごく勇気をもらいました。あのドキュメンタリーに描かれていたのは、人気ミュージシャンたちの“産みの苦しみ”だけではなく、“30歳前後の男性の成長痛”だったように思えて。
ゆりこ:なるほど! その視点にハッとしました。矢野さんは確か、ジョングクさんと同い年でしたよね?
矢野:はい、今年で29歳になります。だんだん周りに結婚する人、転職する人など、人生が変わってゆく仲間が増え始めました。そんな周囲と比べて「自分はこのままでいいんだろうか?」という思いと、人生のパイセンからの「今が転換期」「課題とゴールは自分で決めろ」というフィードバック。モヤモヤしていた時にBTSのカムバックが重なったことは、僕にとってはラッキーでした。『BTS: THE RETURN』を見た後に、再び『ARIRANG』を最初から聞き直してみたら、また違う発見があったんです。
ゆりこ:それはどんな? 気になります。



