若者世代に広がる『静かな退職』……転職のプロが語る「リスク」と「意識するべきこと」とは?

転職やキャリアに関する悩みや疑問に、ひとつ上を目指す人の転職サイト『type』編集長の三ツ橋りさが回答します。今回は「静かな退職」について。

20代、『静かな退職』派です。上昇意欲がないのは悪いことでしょうか?
20代、『静かな退職』派です。上昇意欲がないのは悪いことでしょうか?
転職やキャリアに関する悩みや疑問に、ひとつ上を目指す人の転職サイト『type』編集長の三ツ橋りさが回答します。今回は、「静かな退職」について。
 

(質問)
20代、『静かな退職』派です。上昇意欲がないのは悪いことでしょうか?

 

(回答)
給料以上の働きはしたくない、プライベートを優先してほどほどに生活できればいい。そんな「静かな退職」的なスタンスは、決して悪いことではありません。変化の激しい現代において、過度なストレスから自分を守るための合理的な判断とも言えるでしょう。しかし、その状況を維持し続ける一方で、「今の勤務先以外では通用しなくなるリスク」については、冷静に見極めておく必要があります。


詳しくは以下で解説します。

「静かな退職」とは? 注目される背景

まずは言葉の整理をしましょう。「静かな退職」とは、実際に会社を辞めるのではなく、心理的に仕事から距離を置き、割り振られた必要最小限の業務だけをこなす姿勢を指します。

「定時で即座にログアウトする」「範囲外の仕事は断る」といったスタイルは、特に20〜30代を中心に広がっています。背景には、かつての「会社に尽くせば報われる」という構造が変化し、自分自身の生活や時間を優先する価値観が定着したことがあります。

30代・40代で直面する「キャリアの停滞リスク」

上昇意欲の有無は個人の自由ですが、仕事への関心まで捨ててしまうことには現実的なリスクが伴います。転職市場には、年齢に応じた経験や能力への期待値があります。20代であれば「指示を正確にこなす能力」だけでも需要がありますが、30代、40代と進むにつれ、企業側は「特定の分野での習熟度」や「周囲との調整能力」を求めるようになります。

もし、会社の状況変化や家庭の事情などで転職を検討せざるを得なくなったとき、スキルのアップデートを止めていた状態では、市場のニーズとの間に乖離(かいり)が生じます。AIや若手で代替可能な業務しか経験してこなかった場合、いざというときに「今の生活レベル」を維持できる条件で再就職することが、非常に難しくなってしまうのです。

AI時代を生き抜くための「効率化戦略」

では、昇進を望まない人はどう動くべきか。私は、「少ない労力で成果を出すための、効率化に注力する」という戦略をおすすめしています。

AIがルーティーンワークを自動化していくこれからの時代、ただ指示を待つだけの業務の価値は相対的に下がっていきます。しかし、組織に過度に依存せず、「自立した専門家」としての立ち位置を確保することは可能です。

例えば、以下のようなポイントを意識してみてください。

・「この作業なら、あの人に任せるのが一番確実だ」と思われる習熟度を持つ
・最新のAIツールを活用して、自分の業務時間を短縮する方法を確立する
・社内のルールや人間関係を把握し、円滑に仕事を進行させるスキルを磨く

これらは出世を目指すためのものではなく、自分自身の負担を減らし、自由な時間を確保するための技術です。「頑張りたくない」からこそ、最小限の力で期待に応える方向に知恵を絞るのです。

未来の自分に「選択肢」を残しておく

キャリア形成とは、必ずしも役職を上げたり、高い報酬を目指したりすることだけを指すのではありません。自分が適していると感じる環境で、安定して働き続けることもまた、重要なキャリアの在り方です。

「静かな退職」を選んでいる今のあなたに意識してほしいのは、「いつでも別の環境へ移れる状態」を維持しておくということです。

・1日5分、業界の動向を確認する習慣を持つ
・半年に1度、自分の経歴を書き出して客観的に評価してみる

こうした小さな習慣があるだけで、10年後に自分が選べる選択肢の数は大きく変わります。

変化の激しい時代に「自分らしい働き方」を継続するためにも、今の仕事の中で「これなら無理なく続けられる」という自分の強みを、1つだけ持っておくことから始めてみませんか。
三ツ橋 りさ
この記事の執筆者: 三ツ橋 りさ
『type』編集長
2006年4月、株式会社キャリアデザインセンターに入社。転職情報誌『Woman type』の編集を経て、転職サイト『女の転職type(旧・女の転職@type)』のUI/UX改善やサイトリニューアルなどに従事。13年04月~15年12月まで『女の転職type(旧・女の転職@type)』の編集長に就任。産育休を経て16年11月より転職サイト『type(旧・@type)』の編集長として復職。19年10月より2度目の産育休を取得し、21年5月に復職。21年6月からtype編集長に就任し現在に至る。   type■https://type.jp/   女の転職type■https://woman-type.jp/ ...続きを読む
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