京都ノートルダム女子大の募集停止や武庫川女子大の共学化発表は記憶に新しく、関東でもフェリス女学院大や白百合女子大などが定員割れを起こしています。
こうした、かつてのブランド校が苦しむ姿を見て、メディアは「女子大の危機」と書き立てます。
ですが、その主語は少し大き過ぎるかもしれません。同じ関東圏でも、東京家政大や大妻女子大、共立女子大などは定員割れとは無縁で、むしろ堅調な人気を誇っているからです。
凋落(ちょうらく)する大学と、生き残る大学。その「生死」を分けた決定的な差は何だったのでしょうか。今回はその生存戦略の正体を探るべく、「危機的ではない女子大」の1つ、共立女子大の事例にスポットを当てます。
「教養の女子大」と「実学の女子大」の明暗
女子大には2種類あります。教養系の女子大と実学系の女子大です。前者はミッション系の女子大に代表される「お嬢様女子大」と言われていた大学です。良家の子女が教養を身に付けるために進学した大学です。一方で、女子が「手に職」をつけるための女子大も存在しました。
その典型例が共立女子大です。1886年に設立された共立女子職業学校が発祥です。1949年に家政学部を開設し、被服や栄養士といった「手に職」を付けていくための教育を展開してきました。
その後、2004年に短大に看護学科を新設し、2007年には建築・デザイン学科と児童学科を設置。2013年には4年制大学の看護学部も誕生し、看護師や建築士、幼稚園教諭、保育士の資格を取得できるようになりました。
「女性社長の出身大学ランキングで10位に入っています。専門性を生かして起業される卒業生が多いからではないかと思います」(共立女子大学 入試・広報課 広報グループ 長野さん)
建築士やデザイナーとして独立するケースも目立ちますが、その専門性を支える教育体制は今後さらに強化されます。具体的には、2026年には家政学部の児童学科が「児童学部」へと改組し、2027年には看護学部に助産師課程も導入される予定で、より高度な専門教育へとかじを切っています。
「女子大だから」では選ばれない時代の生存戦略
ここで1つの疑問が浮かびます。性的な役割分担がない今、女子大の存在意義はどこにあるのかという点です。かつてなら「ジェンダーギャップがあるから女子は手に職をつけないといけない」といえましたが、今はそういう時代ではありません。職業の選択の幅が広がっていますし、専門職でなければ出産後に仕事に復帰できないということもありません。
昭和女子大の松田忍教授は、「ジェンダーギャップがあるから女子大は必要という考え方は今の学生にはわかりにくいものでしょう」とコメントしています(※東洋経済education×ICT 2025/10/20配信記事より)。
今の女子学生は、ジェンダーギャップを実感しないまま育っています。その女子学生たちに「女の子だから手に職を付けなさい」と言っても、もはや通用しないのです。
そういう時代にどうやって、女子大は存在意義を学生にPRできるのでしょうか。
「女子大だからという理由で志願する学生はかつてほど多くはありません。それよりは学びたい学部学科を選んでいる中で共立女子があるという方向性ですね。建築・デザイン学部の学生は四工大(芝浦工業大、東京都市大、工学院大、東京電機大)との併願が目立ちます」(共立女子大学 入試・広報課 渡辺さん)。
つまり、今は「女子大か共学か」ということよりも、「学びたい学部」で進学先を選ぶのです。そうなると、共学の大学も含めた多くの大学の中から、共立女子大を選んでもらう必要があります。
「建築・デザイン学部は建築だけでなく、デザインに関する学びに力を入れています。設計・施工などの工学技術だけではなく、美術センスの育成を重視し、建築や住居、日用品、グラフィックのデザインが学べます」(渡辺さん)
建築や商品についても、使用する側の視点に立って教育を行う点が、女子大だからこそできることのように見えます。
共立女子大のキャンパスにも、そういった「使用する立場」からの創意工夫があり、例えば1人になれるスペースが確保されています。友達とにぎやかに過ごしたいときもあれば、1人で静かに過ごしたいときもある。そうした女子学生の繊細な心情に寄り添った設計だと感じました。
「共学の大学と重なる部分はもちろんありますが、女子大だからこそできるとがった部分も打ち出していくようにしています」(渡辺さん)



