将来どのような立場になっても
皇室典範の改正の責任を負う国会、さらにその改正を主導すべき政府はこれまで、いったい何をやってきたのでしょうか。皇室典範の改正をめぐる政治の動きがまったくなかったわけではないのですが、今のところ結果としては何もやっていないに等しい、情けない状況です。天皇陛下は皇太子時代、平成17年(2005年)のお誕生日に際しての記者会見で敬宮殿下のご養育方針について問われ、以下のように答えておられました。
「愛子の養育方針ですが、愛子にはどのような立場に将来なるにせよ、一人の人間として立派に育ってほしいと願っています」
敬宮殿下がまだ3歳だった頃のお答えです。
今考えると、いささか意味深長な答え方をされていました。陛下はこの時点で、次の天皇として即位されることが確定している「皇太子」というご自身の立場の重さゆえに、言葉を慎重に選んでおられます。
しかし、もしこれまでの皇位継承ルールがそのまま変更されないとお考えならば、敬宮殿下が結婚されたら皇室から出ていかれることが決まっているのですから、「どのような立場に将来なるにせよ」という表現をされることはなかったはずです。
制度の改正によって、ご結婚後もそのまま皇室に残られる可能性や、改正の中身によっては天皇として即位される可能性もある。そのようにお考えだからこそ、幅を持たせた「どのような立場」という言い方になったのではないでしょうか。 この書籍の執筆者:高森 明勅 プロフィール
皇室研究者、國學院大學講師。専攻は、神道学、日本古代史。1957 年、岡山県倉敷市に生まれる。國學院大學文学部卒業後、同大学院博士課程単位取得。國學院大學日本文化研究所研究員、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当などを歴任。小泉純一郎内閣当時の「皇室典範に関する有識者会議」において8名の識者、皇室研究の専門家のひとりとしてヒアリングに応じる。「プレジデン トオンライン」にて『高森明勅の「皇室ウォッチ」』を月1回連載中。



