踏みとどまった地上波でのサッカーW杯中継。五輪不正に揺れた電通が「復権」の兆し

サッカー・ワールドカップの放映権交渉が決着しました。有料ネット配信の独占になる可能性もありましたが、地上波3局も日本戦などを中継することになり、無料放送は維持されました。その背景を探り、スポーツ中継の今後を考えてみます。(画像出典:PIXTA)

サッカーのテレビ観戦
サッカーW杯の地上波無料放送は辛うじて維持された(画像出典:PIXTA)
2026年6~7月にアメリカ、カナダ、メキシコの北中米3カ国で開かれるサッカー・ワールドカップ(W杯)は、従来より16チーム多い48カ国・地域の代表で争われます。試合数も64から104へと増加するのが特徴です。

NHK、日テレ、フジで一部試合を中継

そのような状況の下、有料ネット配信のDAZN(ダゾーン)が日本国内で全104試合を生配信する権利を得ました。

しかし、独占とはならず、NHK、日本テレビ、フジテレビの地上波3局も、日本戦など一部を無料で中継することが決まりました。各紙報道によれば、日本向けの放映権料は総額300~350億円とみられています。
 
前回のカタール大会は総額200億円前後とされ、インターネット放送を行う「ABEMA」が無料で全試合を中継。地上波もNHK、テレビ朝日、フジテレビが日本代表戦を含む一部の試合を放送しました。
 
今回は試合数の増加もあって放映権料の高騰は必至とみられ、地上波の放送局が権利を獲得できるかどうかが注目されていました。
 
結果的にNHKは、日本戦を地上波の総合とBSで1次リーグから全て生中継し、開幕戦や決勝を含む計33試合を地上波で放送する予定です。また、高画質のBSプレミアム4Kでは、全104試合を生中継と録画で放送することになりました。
 
日本テレビは、1次リーグの日本戦1試合を含む計15試合、フジテレビも10試合を生中継する計画で、詳細は後日発表されます。
 
抽選会の結果、日本は1次リーグF組に入り、2026年6月15日にオランダ、21日にチュニジア、26日に欧州プレーオフの勝者(2026年3月に決定)と対戦することが決まりました(※日付は日本時間)。8大会連続8回目の出場となる日本は「史上最強」とも呼ばれる代表チームを編成し、本番に臨みます。

危機感を募らせていたサッカー協会

地上波での放送が維持され、胸をなでおろしたのは日本サッカー協会かもしれません。

DAZNが日本に進出した2016年以降、Jリーグと2033年までの長期放映権契約を結んでいます。W杯のアジア地区予選も日本代表のアウェー戦はDAZNでしか視聴できない状況が続いており、前回W杯カタール大会のアジア最終予選でも、本大会出場が懸かったアウェーでのオーストラリア戦は地上波では放送されませんでした。

「無料で見られない」ことに対するファンの不満は根強いものがあります。

日本サッカー協会の田嶋幸三会長(当時)が「地上波でいろんな人が見ることができる環境は欠かせない」と発言したものの、地上波での放送は実現しなかった経緯があります。
 
田嶋氏の後任である現在の宮本恒靖会長も、「たくさんの人に見てもらえるような状況にするというのは、サッカー協会としてやれることだと思います。全く(何も)やっていないわけではないです」(2024年9月のW杯予選、中国戦の後)と報道陣に明かすなど、有料ネット配信だけになることに危機感を抱いていました。
 
ファンの失望だけでなく、子どもたちがテレビでサッカーを見る機会も減るため、将来的な競技の普及に及ぼす影響も指摘されています。
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