「野球は8、9回が面白い」という意見
日本高校野球連盟で検討されているのも、こうした世界的な流れに沿うものといえます。しかし、「野球は8、9回が面白い」という意見は根強く、終盤の攻防を楽しみにしている人が多いのも事実でしょう。球児たちが繰り広げる接戦は、高校野球ファンにとっては欠かせないものかもしれません。
ただ、歴史を振り返れば、高校野球でも選手の健康面を考え、「時短」が進められてきました。
中等野球だった戦前は、延長戦が無制限で行われ、甲子園大会では25回が最長記録です(1933年夏の中京商1-0明石中)。その後、延長は18回、15回と短縮され、引き分けの場合は再試合になりました。
2018年春からは無死一、二塁から開始するタイブレーク制が延長13回から導入され、2023年からは10回からタイブレークで決着をつけています。
高まる球児らの健康リスク
投げ過ぎによる投手の負担軽減だけでなく、近年は熱中症のリスクをどう避けるかが、最大の課題です。気温は年々上昇を続けており、今年の夏の平均気温は平年と比べて2.36度高く、気象庁が1898年に統計を取り始めてから最高を記録しました。40度以上を観測した地点数は全国で延べ30に上りました。
暑さを避けるため、今夏の甲子園では「朝夕2部制」が実施されました。8時から2試合、16時15分から2試合を行いましたが、豪雨による中断もあり、最も遅いときは第4試合の終了が22時46分になりました。
運営側の負担も大きく、高校生の大会としても疑問が残るところです。
【参考】日本高等学校野球連盟「7イニング制に関するアンケート調査実施について」
気候変動だけでなく、少子化による野球部員の減少や学校の統廃合も進んでいます。社会環境の変化に応じて、持続可能な高校野球の在り方を模索しなければなりません。 この記事の執筆者:滝口隆司
社会的、文化的視点からスポーツを捉えるスポーツジャーナリスト。毎日新聞では運動部の記者として4度の五輪取材を経験。論説委員としてスポーツ関連の社説執筆を担当し、2025年に独立。著書に『情報爆発時代のスポーツメディア―報道の歴史から解く未来像』『スポーツ報道論 新聞記者が問うメディアの視点』(ともに創文企画)。立教大学では兼任講師として「スポーツとメディア」の講義を担当している。



