以前は、結婚といえば「婚姻届を出すもの」だったが、今はいろいろな形のパートナーシップが生まれている。婚姻届を出さない事実婚であっても、カップルの数だけ思いがあり、届を出さないことですべて「事実婚」とくくるのも少し違うという状態になっている。
第3子を妊娠中のタレントSHELLYさんは、二児をもうけて離婚し、現在はパートナーと事実婚だが、子どもの名字が変わらないよう相手から事実婚を提案してくれたという。
坂上忍さんやいしのようこさんも、事実婚を公表している。
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一般的にも事実婚は増えているが、別姓を貫きたい、家制度に反対、「個」を重視したいといった精神的な自由でのメリットはよく知られている。だが、もちろんデメリットもあるはず。事実婚を貫きたかったができなかった人、それでも貫いている人に、デメリットを聞いてみた。
「事実婚」で苦労して、妊娠で気持ちが変わった
4年前に結婚するときはふたりで事実婚を選んだというアイさん(38歳)。だが2年後、妊娠をきっかけに少しずつ考えが変わっていった。
「結婚してすぐ、ふたりで家を買おうと思ったんですが、当時は事実婚だと一緒にローンを組むのがむずかしかったんです。今は対応してくれる銀行も増えたようですが。夫の会社の社宅に入居するときも、事実婚であることがけっこうネックになって審査が厳しかった。でも、私たちは個としての結びつきを大事にしたかったし、お互いの“家”と昔ながらの関係にはなりたくなかった。名字を同じにすることのデメリットのほうが大きいと感じていたんです」
ところが妊娠してから、彼女は少しずつ子どもの視点で自分たちの関係を見つめるようになっていった。
「事実婚だと子どもは私の名字になる。夫は当然、認知はするけど周りはどう見るのかな、と。『本当の父子じゃない』と見られる可能性もありますよね。私も仕事をしていますから保育園に預けることになるけど、きちんと対応してもらえるのだろうか、小学校に入ったらいじめられたりしないだろうか。考えているうちになんだか、親の身勝手で子どもを犠牲にするような気がしてきて」
それでも夫は、事実婚にこだわった。そもそも「今も名残のある家父長制度」というものに嫌悪感を覚え、20歳の誕生日に分籍してひとりの戸籍を作ったという。
「夫が生まれ育った地方では、男尊女卑的な雰囲気が残っていたらしいです。まして夫の家は本家で、義母は長男の嫁として夫の両親、祖父母のめんどうまで見ていたそう。苦労している母親を見て、こういうのは嫌だと子供心に痛切に感じたんですって」
だからこそ夫は早くに自立した。家業は継がないと宣言して上京、自力で大学へ行き、第一希望の金融関係に就職、5年後に外資系に転職した。18歳からは自力でがんばってきたという自負が強いから、アイさんにも「自由な個であること」を求めた。
「でもこの日本でめんどうなく生きていくには婚姻届を出してしまったほうがいい。私はだんだん現実的にそう思うようになった。夫とはずいぶん議論をしましたが、最終的に夫は『わかった』と。子どもが理解できるようになったら、戸籍のことはまた改めて考えようと譲ってくれました。何より子どもを優先して考えようと話もまとまった。婚姻届を出したときは、私も『こんな個人的なことを役所に提出して公にするのは違和感がある』と思いましたが、出生届などもスムーズだし、互いに法定相続人にもなれるし、やはり便利は便利ですよね」
裏を返せば、婚姻届を出さないことが理由で、日常生活にもいちいちめんどうが生じる恐れがあるわけだ。
「事実婚」を貫く覚悟と、受け入れたデメリット
「うちはふたりとも事実婚をしたいと一致しました。子どもは私の姓を名乗っています。夫は自分だけ姓が違うことを、子どもたちにもきちんと説明しています。まだ理解できていないとは思うけど、そのうちわかってくれればいいな、と」
フミさん(40歳)は10年前に同い年の男性と事実婚を選択した。ふたりともそれぞれ個人事業主だったため仕事を続けていく上で姓を変えたくなかったこと、対等な関係を築く上でも、どちらかの姓に変えなければいけないシステムが納得できなかったことなどからだ。
「それでも処世術として、うちは公正証書(※)を作りました。パートナーシップ制度をもうけている自治体に引っ越しもした。だから保険や家の購入は、多少のめんどうはありましたがなんとかできました。あとはご近所への挨拶のとき、いちいち事実婚ですと説明して歩いたのがめんどうだったかな(笑)」
8歳の長男が小学校に入学するときも、担任にはしっかり説明した。ふとしたことで父親と母親の姓が違うことに気づいた息子の友だちが、どういうことなのと騒いだことがあったが、フミさんはその子と親を家に呼んで説明した。
「こういう選択肢もある、こういう家庭もあることをちゃんと知ってもらいたくて。親が事実婚だからって子どもがいじめられたりしたらそれは耐えがたいですから」
あちこちに心を砕かなければならないのが事実婚のデメリットだと彼女は思っているが、だからといって「自分たちのありよう」を変えるつもりはない。
「もし別姓婚を選択できたとしても、もはやうちは届を出さないかもしれません。別に世の中に反発しているつもりはないんですが、私たちはこの状態で居心地がいいから。子どもが大きくなって結婚するとき、どういう選択をしようが本人の自由だと思いますから、人に押しつけるつもりはありません」
さまざまなありようを、さまざまな事情で選択する人たち。デメリットとメリットをよく吟味して決断していくしかないだろう。ただ、「結婚したら女性が男性の姓に変わらなければならない」とか「男の籍に女が入る」とかの間違った意識だけは改めていく必要があるだろう。
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※公証制度について(法務省)
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