テレビ業界は、コンプライアンスのユルい非常識社会
そこに加えて、港氏らの対応が「最悪」なのは、「外部の意見」も全く取り入れていないことだ。今回の調査報告書のみならず、テレビ朝日の名物ディレクター「ナスD」が経費の使い込みで処分されたことからも分かるように、テレビ業界というのは一般社会に比べてかなりコンプライアンスがユルい。
ネクタイを締めてスーツを着て9時から17時まで働くような世界ではなく、「高視聴率を叩き出した」とか「人気タレントとコネがある」という結果さえ出せば、あまりうるさいことを言われる世界ではないことが大きい。
また、この世界は基本的に男社会だ。しかも、人気タレントや大手芸能事務所という「力」にかしづくカルチャーが浸透しているため「権威に弱いおじさん」が多く、またそのような者は立場の弱い人、特に若い女性を軽視する傾向がある。
事実、「ギョーカイの事情通」を名乗る男性たちは今もなおSNSで、「今回の案件は男女の色恋沙汰でしかない」「結婚を期待していた女性側に対して、中居君がその気がないと告げてトラブルになっただけ」と訴えて、世間をドン引きさせている。
筆者はこれまで報道対策アドバイザーとして金融、製造、交通、IT、外食、食品、小売りなどさまざまな業界の危機管理に携わってきたが、ダントツでコンプライアンスがユルく、女性の人権意識が低いと感じるのはマスコミである。
そういう世間ズレしたムラ社会の中で40年以上も過ごして経営幹部にまでなった人たちには、残念ながら性暴力被害者の対応はできない。いかに自分たちが非常識なのかを知るためにも、外部のプロに相談すべきだった。
問題が起きた時こそ「外部の意見」を
これは他業界にも言える。危機に直面すると経営幹部は問題を抱え込みがちだが、それをやればやるほど社会とのズレが際立って炎上をしてしまう。「これは誰にも話せない」という問題が起きた時こそ勇気をもって「外部の意見」を取り入れていただきたい。
この記事の筆者:窪田 順生
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。