結婚式を控えていたカップル180組が途方に暮れている。結婚式場として人気のある老舗「ホテル雅叙園東京」(東京都目黒区)が突然、予約していた結婚式をキャンセルしてこんなことを言い出したのだ。
当社は、2025年9月30日を以て建物所有者との定期建物賃貸借契約が満了となるため、2025年10月1日より一時休館とさせていただきます。尚、今後の営業再開につきましては予定が決まり次第、ご案内させていただきます。
(2025年2月18日 ホテル雅叙園東京 総支配人)
日本人の予約客より外国人富裕層を選んだ?

そこで疑問なのが、なぜファンド側はここまで「10月休館」にこだわったのかということだ。結婚式を控えた人々がたくさんいるのだから少しくらい契約延長を認めてくれてもいいのではないか。
この理由として観光業界でささやかれているのが、「外国人富裕層をターゲットとした高級ホテルに急いでリニューアルするためでは」という見方である。
ホテル雅叙園東京は先ほどの発表の前日に、今年10月から2026年3月まで全館リニューアル工事を行うと発表をしたが、1日で削除をしている。J-CASTニュースがこの理由を質問したところ、リニューアル工事についてはホテル側から発信すべき情報ではなかったからだと説明したという。
つまり、定期建物賃貸借契約うんぬんはあくまで建前としての話で、「ブルックフィールド・アセット・マネジメント」は1日も早くホテルを全館リニューアルしたいので、結婚式の予約客らが切り捨てられてしまったというのが、ホントのところのようなのだ。
高評価なのに安すぎる日本のホテル
では、どのような全館リニューアルを目指しているのかというと「富裕層が利用する高級ホテル」である可能性が高い。ご存じのように今、インバウンドが過去最高の盛り上がりを見せている。訪日外国人旅行消費額は約8.1兆円で過去最高。これをけん引するのが、外国人富裕層である。賃金の上がらない日本人と違って、彼らは旅先でバンバンをカネを落とす。1箱3万円のウニを買い、“億”の別荘を即決で購入する。
実はそういう外国人富裕層たちにとって日本のホテルは安すぎる。欧米の高級ホテルでは1泊300万円などザラにあるが、日本では「高級」と位置付けられているホテルのスイートルームはそれほど高くない。
その代表が、ホテル雅叙園東京だ。実はこのホテルは、世界有数のトラベルガイド「フォーブス・トラベルガイド 2025」のホテル部門にて3年連続で、4つ星を獲得している。にもかかわらず、最も高い雅叙園スイートですら88万円である。つまり、外国人富裕層からすれば、「評価が高い割に格安なホテル」なのだ。
さて、そんなホテル雅叙園東京を、「価値を高めて売却する」ことを生業(なりわい)とする海外ファンドが取得すればやることは1つしかない。すぐさま全館リニューアル工事を進めて、「1泊300万円のスイートルームを擁する超高級ホテル」として再スタートを切るのだ。
ファンド的な発想からすれば、日本人を対象とした結婚式場ビジネスで得られる利益より、1泊300万の富裕層をたくさん迎え入れた方が「ホテルの価値向上」につながることは言うまでもない。だから、このような強引な予約キャンセルにつながったのではないか。