代理人弁護士によれば昨年末から資金繰りが行き詰まっていたということだが、多額の授業料を先払いしていた受験生と保護者からすれば「詐欺」のようなものだ。
ニチガク倒産は序章に過ぎない
これから大学受験を控える子どもを持つ親などは、「もしこんな予備校を選んでしまったら」と不安になるばかりだろう。ただ、恐怖をあおるわけではないが、これからニチガクのような「ヤバい予備校」はさらに増えていく。少子高齢化が進んでいくからだ。
経済産業省・経済解析室の「止まらない少子化、学習塾への影響は?」の中には、6〜18歳までの人口推計と、学習塾の受講生徒数に基づいて作成される「学習塾指数」が並べられている。
10年前は1500万人ほどいた子どもが2023年には約1350万人まで減っているのだから当たり前といえば、当たり前だ。これは学習塾のデータだが、教育ビジネスということでは大学受験予備校も同じような苦境に陥っていくのは容易に想像できよう。
そんな「予備校大淘汰(とうた)時代」に拍車をかけているのが、「子どもの奪い合い」だ。資源が少なくなれば、熾烈(しれつ)な争奪戦が始まって、力の弱い者からつぶれていくというのは自然界の掟(おきて)だ。それは予備校も変わらない。
「昔ながらの予備校」が苦境に立たされる理由
分かりやすいのは、少子化の時代、神奈川県を中心に急成長している「臨海セミナー」だ。ここは同業者からクレームが入るほど激しい生徒勧誘活動をしており、校舎数も生徒数も右肩あがりで増えている。その勢いはとどまることを知らず、2021年度には受講生は約6万人、校舎数も478校だったものが、2024年9月時点で、校舎は535校に増えて、生徒数も7万375名(臨海セミナー 公式Webサイト)となっている。わずか3年で1万人も生徒数を増やしているのだ。
子どもが減っていく中で、こういう形で生徒数を増やしていくプレーヤーがいれば当然、「昔ながらの大学受験予備校」はどんどん衰退していく。
そこに加えて、「参入組」も増えてきた。分かりやすいのは「アルプスの少女・ハイジ」のCMでおなじみの「家庭教師のトライ」だ。学習塾指数がガクンと落ち込んだ2023年、難関大学合格を目指す高校3年生・高卒生を対象に、「大学受験予備校のトライ」をスタートした。
もともとトライは家庭教師業界の中のトップで、2022年度入試では1万6204名の大学合格者を出していた。そこが満を持して「予備校なのに完全個別」というスタイルを始めた。
ニチガクのようにいくら40年以上の実績があろうとも、「少人数制授業」「スタディルーム(自習室)で講師が巡回していて質問できる」くらいが特徴という「昔ながらの予備校」はどうしても霞んで見えてしまうのも致し方ないだろう。