川崎のトロリーバス、解体から一転「保存」の可能性も。全国に“3台だけ”の貴重な鉄道遺産に新たな希望
1967(昭和42)年4月に廃止された川崎市のトロリーバスの車両が、今も同市高津区の二子塚公園に保存されている。この保存車両が「老朽化で解体」されるとの報道があったが、一転、保存の可能性が出てきたという。現地の様子をリポートする。
トロリーバスという乗り物をご存じだろうか。見た目はバスと一緒だが、日本語の名称は「無軌条電車」。バスと電車をミックスしたような、なんとも不思議な乗り物である。屋根上に取り付けられたトロリーポールから集電するのは電車に似ているが、レールはなく、バスと同様に道路上をゴムタイヤで走行する。
燃費がよいとされ、レールが不要なため設備投資の面で路面電車よりも有利とあって、かつては日本の多くの都市で見られたが、モータリゼーションの進展による交通渋滞が激しくなるにつれて、路面電車とともに、その姿を消していった。
解体報道から一転、保存の可能性も
神奈川県川崎市のトロリーバスが廃止されたのは1967(昭和42)年4月。その車両が1台、今も同市高津区の二子塚公園という小さな児童公園に保存されている。この保存車両が「老朽化で解体」されるとの報道があったので、2024年12月18日、様子を見に現地へ出かけてみた。
報道では「16日にも解体を始める方針」とのことだったので、時すでに遅しかと思ったが、車両を風雨から守るために設置されていた屋根などは撤去されていたものの、車両自体は、まだそこにあった。
現地にいた作業員に話を聞くと、「解体を前提に、近いうちに別の場所に車両を搬出する予定」とのことだが、実は報道を見て「車両を買いたい」という人が現れたらしく、解体から一転、別の場所で保存される可能性が出てきたようなのである。
トロリーバスといえば、国内最後の現役路線だった「立山トンネルトロリーバス」(富山県)が老朽化のため、2024年11月30日を最後に引退したばかりだ。保存車両も川崎のほか、大阪と長野にあるくらいで非常に貴重なもの。川崎の車両が保存されることを願う。
なお、川崎のトロリーバスの歴史については、筆者の近著『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)に記している。
この記事の執筆者:森川天喜 プロフィール
神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など