元プロ野球・巨人の選手らによる野球賭博事件で、賭博開帳図利(とばくかいちょうとり)ほう助と常習賭博の罪に問われた元投手笠原将生被告(25)に対し、東京地裁は5日、懲役1年2月、執行猶予4年(求刑懲役1年2月)を言い渡した。胴元の飲食店従業員斉藤聡被告(38)は賭博開帳図利の罪に問われ、懲役1年6月、執行猶予4年(求刑懲役1年6月)の判決となった。
判決によると、笠原被告は2014~15年、斉藤被告が開いたプロ野球を対象とした賭博に、松本竜也(23)、高木京介(27)両元選手=いずれも賭博罪で罰金刑が確定=を誘って、賭けさせる手助けをしたほか、自らも計450万円を賭けたという。
「賭博場開帳図利(賭博開帳図利)」とは、どのようなものなのだろうか。弁護士の酒井将氏がAll Aboutで以下のように解説している。
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賭博場開帳図利罪(賭博開帳図利罪)とは
酒井氏によると、刑法186条2項では「賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する」と規定しているという。このうち、前者を「賭博場開帳図利罪(とばくじょうかいちょうとりざい)」、後者を「博徒結合罪」(結合とは、博徒との間で親分子分の関係を結び、自己の縄張りで賭博を行う便宜を供与すること)というのだと酒井氏は説明する。
つまり、賭博場開帳図利罪は、「賭博場を開帳し」「利益を図った」場合に処罰の対象となるということだ。「賭博場を開帳する」とは、「自ら主催者となって、その支配のもとに賭博をさせる場所を開設すること」を指すという。また、「利益を図る」とは、「利益を図る目的で行為すること」をいい、実際に利益をあげたか否かは問わないという。
どうして処罰されるのか?
賭博罪が処罰の対象となる理由について、酒井氏は最高裁判所の過去の判例を引用して「みんなが賭博に夢中になると誰も働かなくなり、真面目に働く社会が失われてしまう」点にあるとしている。また、野球賭博の胴元が反社会的勢力(暴力団)である場合もあり、賭博行為を処罰することで反社会的勢力(暴力団)の資金源を断つ効果もあるとしている。
また、賭博場開帳図利罪は、「自らは財物喪失の危険を負担することなく、人の射幸本能(偶然の利益や成功を得ようとする本能)を利用し、賭博犯を誘引又は助長して利を図る罪」であり、単純賭博罪や常習賭博罪に比べてより悪質と見る向きもある。また、それが「自ら他の犯罪を誘発する放蕩・無頼の集団の形成を意味する点」も見過ごすことができないと酒井氏は説明している。
メールのやりとりだけでも「賭博場の開帳」と言えるのか
「賭博場の開帳」というと、「博徒が賭場に集まって、博打を打つ」というイメージがあるが、どこかに集まるわけではなく、胴元が顧客とメールのやりとりだけで賭博を行うことも、「賭博場の開帳」といえるのか。
この点については、かつて胴元が顧客と電話で野球賭博のやりとりをした事件に対する最高裁判所の判決があり、これによると「刑法186条2項の賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しないものと解すべきであり、そして、各原判決の判示する右事実関係に徴すれば、『野球賭博』開催の各所為は、事務所を本拠として各賭客との間に行なわれたものというべきであるから、賭博場開張の場所を欠如するものではない」として、同罪の成立を認めたという。
このように、物理的に集合しなくても、賭博開場図利罪は成立するものだと酒井氏は述べている。
最近では、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使って野球賭博をしたとして、大阪府羽曳野市の自営業、ダルビッシュ翔被告(27)に賭博開帳図利と常習賭博罪の有罪判決が出ている。翔被告は米大リーグ・レンジャーズの有投手の実弟。
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