「格好いい!」「カルチャーショック…」フィンランドの高校生が、日本の公立小学校に感動した理由

2024年10月某日に、東京都内にあるごく普通の公立小学校を訪れたのは、フィンランドから来た高校生10人。ある1本の映画をきっかけに来日した彼らに、日本の学校を訪問して感じたことを聞いてみました。

「教育大国」と言われるフィンランドが直面する、教育の課題

日本でも教育大国として知られるフィンランドですが、現在の教育の形について、国内からは必ずしも肯定的な意見ばかりではないのだそうです。前出のサリ先生に、日本の学校を見た感想やフィンランドとの違い、そして現在のフィンランドの教育課題をお聞きしました。 

サリ先生「来日前は、日本の学校はとても厳しそうだと感じていましたが、実際に学校の様子を見ると、必ずしも軍隊のように厳しく統率されているわけではないと気付きました。しかし、今日見た運動会の練習などでは、秩序を保ちながら全員が組織の中で動くことができていましたよね。そこがとても興味深いと思いました。
 
現在、フィンランド国内では『学校が子どもたちの自由を保証することはいいが、それに特化し過ぎているのではないか』という懸念が挙がっています。それによって、昔よりもポライトネスを失いかけているのではないかという声もあります。

今回の来日で見てきた日本の子どもたちの日々の学校生活、例えば掃除や給食の時間などに、自然に他人を思いやる気持ちを養うヒントが隠れていると感じました。今のフィンランドで子どもたちが学校の掃除をすることはなかなか考えられないことなのですが、今後こうした活動に取り組んでみてもよいのかもしれません」
映画『小学校〜それは小さな社会〜』より
映画『小学校〜それは小さな社会〜』より
実際、学校の子どもたちが給食後に掃除をする様子を、フィンランドの高校生はとても不思議そうに見つめていました。彼らが見つめた一生懸命掃除をする子どもたちの姿は、これまでの常識とは異なる何かを気付かせたのかもしれません。
 
昨今、日本の教育について、カリキュラムと教員の働き方の両面から多くの課題が指摘されています。しかし、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)にて安定的な成績を収めていたり、サッカー観戦後のゴミ拾いなどに見られる清潔な状態を維持したりする多くの日本人の姿は、たまたまでは片付けられないでしょう。

この映画から、本作の原題でもある「THE MAKING OF A JAPANESE(=日本人の作られ方)」が見えてくるかもしれません。

映画「小学校〜それは小さな社会〜」は12月13日よりシネスイッチ銀座ほか、全国順次公開。
© Cineric Creative / NHK / Pystymetsä / Point du Jour
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この記事の執筆者:大塚 ようこ
子ども向け雑誌や教育専門誌の編集、ベビー用品メーカーでの広報を経てフリーランス編集・ライターに。子育てや教育のトレンド、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。
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