1つ目は、1000ドル以下の窃盗が起訴されなくなったこと。1000ドル以下のものであれば何を盗んでも捕まらないので、犯罪者にとっては実質“盗み放題”の状況になってしまいました。
2つ目は、保釈金制度の見直し。保釈金が支払えない容疑者の長期勾留を取りやめた結果、再犯が増加したため、州知事は2023年に裁判官の裁量で長期勾留ができるように方針を転換しています。
それらの釈然としない法改正が行われた主な理由は、刑務所収容コストの削減や人種や経済格差の是正と言われています。
日本とはスケールが違う! 小売店の防犯対策
窃盗や強盗などの犯罪が横行する状況下で、ニューヨークの小売店はどのような防犯対策をしているのでしょうか。
鍵付きの商品棚
ニューヨークでは、薬局や百貨店などの小売店で多くの商品が鍵付きの棚に入っています。特別に高価な商品というわけではなく、歯磨き粉やお菓子、冷凍庫に入ったアイスなど、ちょっとしたものも対象です。客が商品を購入したいときは、呼び出しボタンを押して店員に解錠してもらう仕組みになっています。
店内が混雑していると、あちこちの売り場で呼び出しボタンが押され、店員が来るまで長時間待たされることが多く、商品を1つ買うだけでも時間がかかります。日本の小売店では、商品が屋外に陳列されている場合もありますが、ニューヨークでは考えられません。
警備員の配置
薬局、スーパーマーケット、洋服店などの入り口には、万引き防止のために警備員が配置されていることが一般的です。
声をかけてくることはまれですが、店を出る際にレシートやカバンの中身をチェックされる場合も。筆者はある洋服店で、売り場の鏡の前でジャケットを試着したら、試着室に行くよう警備員に注意をされたことがあります。
また、タイムズスクエア近くの薬局では万引きを目撃したこともあります。犯人は“隠れてこっそり”犯行に及んでいたわけではなく、両手に大量の商品を抱え、出入り口を堂々と通ろうとして、そばに立っていた警備員ともみ合いになっていました。
顔写真の掲示
万引き犯や食い逃げ犯の顔写真を店内に掲示し、再犯防止を図っている小売店や飲食店もまれにあります。ニューヨークでは小売店が直接被害を訴え、再発防止に取り組んでいるようです。