それに対して、ニューヨークでゴミを捨てるのは簡単。ゴミ箱は歩道にくまなく設置されているので、東京のようにゴミを持ったまま街を歩き、結局ゴミ箱に遭遇せず、家に持ち帰るようなことはありません。
なぜニューヨークにはトイレが少ないのか?
1つ目は治安の悪化防止です。トイレでの薬物使用、窃盗や暴行などの犯罪防止、かつ犯罪が起きた際の訴訟のリスクを避けるため、多くの施設でトイレの利用が制限されています。特に公衆トイレはホームレスの集まる場所となり、近隣の治安が悪化する可能性があるので設置数が限られているのです。
ニューヨークの犯罪数は非常に高く、在ニューヨーク日本国総領事館の報告によると、2023年の強盗の件数は1万6910件で、東京の70倍以上です。筆者はニューヨークに引っ越して2週間以内に、2件の強盗を目撃しました。「これがアメリカか、ニューヨークか……」と震撼(しんかん)したのを覚えています。
日本では、公衆トイレがなければカフェなどを利用してトイレを済ませる、といった手段もありますが、それを“治安の良さ”と結びつけて考えたことはなく、アメリカに来てから治安状況による環境の差を思い知らされました。
2つ目は、衛生面。アメリカの公共トイレでは、「どうしたらこうなるの!?」と驚くような、清潔とはほど遠い状態に遭遇することが多々あります。トイレの清掃が行き届かないと衛生状態が悪化し、病気の発生につながる可能性もあるので、気軽には使えません。
ニューヨークでトイレに行きたくなったら
公衆トイレもゼロというわけではなく、公園に設置されている場合もあります。ただし、日中は利用できるものの、夜は閉鎖されていることがほとんど。
きれいなトイレが少ないニューヨークでは、清潔そうなトイレを見つけたら、その時は行きたくなくても「とりあえず行っておく」のが正解なのです。
なぜニューヨークには、至る所にゴミ箱があるのか?
ニューヨーク市が莫大な費用をかけてたくさんのゴミ箱を設置している理由はもちろん、ポイ捨て予防。そのおかげで、歩道に落ちているゴミの量は非常に多いというわけではありません。エリアによって異なりますが、すごく汚い所や、中には東京と同じくらいきれいな場所もあります。
東京でゴミ箱を増やせない理由
1つ目は、分別収集の徹底。日本では、ゴミは「分別」が基本です。ニューヨークでは、1種類のゴミ箱を置き、燃えるゴミ、燃えないゴミ、瓶、缶を分別せずに捨てるため、人々の分別意識は日本に比べて格段に低いと言えます。
2つ目はニューヨークと同じく、ポイ捨て予防。日本では、ゴミ箱があると「ここには何でも捨てていい」という意識が生まれ、特にゴミ箱が満杯になっている場合、周囲にゴミを捨てる人が増えると考えられています。ニューヨークと目的は同じなのに、その対策は「真逆」になっているのです。
日本人にとって、街にゴミ箱が少ないことはもはや当たり前。ゴミ箱が近くにないからといってポイ捨てをしようと思う人は少ないと思いますが、不便を感じたことがある人は多いのではないでしょうか。
特に外国人観光客にとっては、どこにゴミ箱が設置されているかわからず、よりストレスを感じ、結果的にゴミのポイ捨てが頻発する可能性もあります。その地域のことをよく知らない観光客が多いエリアでは、トイレやゴミ箱の設置数を増やすなど、より一層の配慮があるといいですね。
この記事の筆者:Khloe プロフィール
アメリカ在住のライター。大学在学中にロサンゼルスへ留学し、現地の広告代理店でインターンシップとして勤務。帰国後、日本企業で広報担当としてライティング業務に従事。2024年からアメリカ・ニューヨーク州に移住し、マンハッタンにある旅行代理店に勤務しながら、ライターとして在住者ならではの視点で海外事情に関する記事を執筆。