そんな今年の『紅白歌合戦』ですが、第一弾となる出場歌手のラインアップをおさらいしていきましょう。
初出場組では「Number_i」「tuki.」に注目!
初出場組で注目なのは、なんといってもNumber_iです。元King & Princeの平野紫耀さん、神宮寺勇太さん、岸優太さんからなるグループで、2024年の元日にデジタルシングル『GOAT』でデビューしたばかり。古巣のSTARTO ENTERTAINMENT(以下、STARTO社)からは1組も出場しない中での抜てきとなり、どんなパフォーマンスを見せるのか楽しみです。
また、初出場は計10組ですが、白組がNumber_iをはじめ、Omoinotake、Creepy Nuts、こっちのけんとさん、Da-iCE、TOMORROW X TOGETHER、新浜レオンさんの7組と半数以上を占めます。初出場の比率が白組の方が多くなるだけに、番組としてどんな影響をもたらすのか見ものです。
紅組に話題を移すと、初出場のILLIT、tuki.さん、ME:Iとかなり異色。特にtuki.さんは、素顔・本名を非公開とする現役女子高校生シンガーで、昨年出場したAdoさんと同じく、どんな演出でステージを見せるのか注目が集まります。
特別枠は「とんねるず」「B’z」「新しい地図」に期待
さて、出場歌手をざっと見ると、少々物足りないというのが正直な印象です。現在、年末にかけて民放各局でも大型音楽番組を放送する中で、『紅白歌合戦』ならではの人選をするのがかなり難しいことは事実。とはいえ、思わず二度見してしまうような驚きが今回の発表ではありませんでした。ただ、例年では放送日まで何度かにわけてサプライズとして「特別枠」が発表されるのが定番。そこで、サプライズで登場しそうなアーティストを勝手に予想していきます。
まず挙げられるのが、「とんねるず」です。とんねるずは、2024年11月8日、9日の2日間にわたって日本武道館で『とんねるず THE LIVE 2024 Budokan』を開催したばかり。約29年ぶりに日本武道館でコンサートを行い、チケットは即完して1万8000人を動員しています。
過去には憲三郎&ジョージ山本、野猿のメンバーとして『紅白歌合戦』に出場。また、木梨さん個人では、所ジョージさんが作詞作曲した『きみのたこ焼き』がNHKの『みんなのうた』で流れるなど、ソロとはいえ関係性もあります。視聴率という点でも大きく貢献してくれそうで、サプライズ出演に期待です。
また、現在放送中のNHK連続テレビ小説『おむすび』に主題歌『イルミネーション』を提供したB’zも注目です。朝ドラ主題歌を歌ったアーティストの出場率は高く追加発表の可能性が大で、B’zの姿をついに『紅白歌合戦』で見られる日が来るかもしれません。
紅組に関しては現時点で出演者が1組少ない状況。それだけに特別枠で女性アーティストの出演はあると考えられるでしょう。そんな中、長く出場が期待される中森明菜さんに注目します。中森さんは、2024年にファンクラブ限定イベントを開催して約6年半ぶりにファンの前で歌声を披露。さらに、精力的に活動を行い香取慎吾さんとのコラボを実現させたばかり。NHKでは、2024年10月に『The Covers』にて「中森明菜ナイト!」が放送されていることもあり、出場の可能性は例年になく上がっています。
さらに、Number_iが出場する流れから、元SMAPの3人で結成した新しい地図にも可能性があります。旧ジャニーズ事務所の退所に関する問題もあり、これまではなかなか音楽番組に出演しなかった新しい地図。しかし、最近ではユニットとしても活発に動き、歌番組への出演も果たしています。新しい地図は、NHKの教育バラエティー『ワルイコあつまれ』へ出演しているので、番組コラボでの出場もありえます。
生まれ変わるべきタイミングに差し掛かった『紅白歌合戦』
他にも、Perfumeやゆずなど常連組の落選や、THE ALFEE、GLAYといった久しぶりに出場するバンドなど、幾つかのトピックがあった今回の『紅白歌合戦』。STARTO社のタレントが2年連続で出場しないなど、いろいろな意味で転換期に差し掛かっていると感じます。まず、選考基準である「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」に照らせば、STARTO社のグループが出ないのは不可解。昨年は性加害問題があったので理解できるものの、今年はNHKの番組への出演も解禁したうえで出場がないので、問題はかなり根深い印象です。
また、Z世代の支持が高いFRUITS ZIPPER、CD売上の多い日向坂46、さらに動員実績も楽曲のヒットもあるYOASOBI、Stray Kids、Adoの落選に説明がつかないところ。もちろん、個別に選考しなかった、断られたなどの可能性もあるでしょうが、選考基準が曖昧なのは問題です。
民放各局の音楽番組が選考基準を公表していないことを考えると、『紅白歌合戦』だけ基準を設けるのは古い考えではないでしょうか? もし設けるならポイント化して見えるようにすべきで、そうでないならNHKが独断と偏見で選んでいるとした方が、よほど落選したアーティストやファンも納得できるでしょう。
また、視聴率が年々下がっている中で、みんなでテレビを囲んで『紅白歌合戦』を見るという文化は消え去りつつあります。現に、SNSを見てもSTARTO社に所属するグループのファンは、落選をさほど悲観していないのが現状です。多くのファンにとって「紅白に出なくても、メンバーが大晦日に生配信などしてくれた方がいい」というのが本音。現に、昨年はSnow Manが自身のYouTubeチャンネルで『【大晦日生配信】Snow Man Special Live~みんなと楽しむ大晦日!~』を配信し、ファンを喜ばせています。
そういった意味でも、かつてみんなで大晦日に見る「国民的歌番組」としての役目が終焉(しゅうえん)に近く、独自路線を見直すべき転換期に差し掛かっていると感じます。現状では、前述したように民放の音楽番組と出演者が変わりません。ならば、原点に立ち返って演歌や歌謡曲を増やし、老若男女で見られる『紅白歌合戦』に戻すのもあり。そういった、番組として独自の方向性がないと、視聴者も「紅白を見たい!」と感じないのではないでしょうか?
今年の『紅白歌合戦』のテーマは「あなたへの歌」。「ひとりひとりに最高の歌をおくります」としていますが、その理念は視聴者に伝わるでしょうか? 今年の『紅白歌合戦』は、今後発表されるであろうサプライズを含め、オリジナリティあふれる番組に仕上げられるのか――注目していきたいと思います。
この記事の筆者:ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。