ウエスタンリバー鉄道で途中下車できないのはなぜ? エレクトリック・レールウェイとの違いとは

東京ディズニーランドのウエスタンリバー鉄道は乗車駅から一周して元の駅に戻るだけ。途中に駅らしい施設はあるものの通過するので乗り降りはできない。理由としては、オープン当時の法律が関係している。一方、東京ディズニーシーにある電車は移動手段として機能している。その違いを解説する。

ウエスタンリバー鉄道の駅が1つしかない理由は?(画像:All About ニュース編集部撮影)
ウエスタンリバー鉄道の駅が1つしかない理由は?(画像:All About ニュース編集部撮影、以下同)

東京ディズニーランドの人気アトラクション「ウエスタンリバー鉄道」。1983年4月15日の東京ディズニーランドオープン当初からあり、東京ディズニーランド園内を周回する鉄道型アトラクションである。

この「ウエスタンリバー鉄道」について、「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。

(今回の質問)
ウエスタンリバー鉄道の駅が1つしかない理由は?

(回答)
この鉄道が開業した当時の法律が関係している。

ウエスタンリバー鉄道は途中駅で下車できない!

東京ディズニーランド園内を走るSL・ウエスタンリバー鉄道は、線路が周回ルートで、列車は時計回りに一周している。乗車できる駅は1カ所のみ。沿線に駅が2カ所あるものの、列車は通過。あくまで車窓風景の1つとして眺めるだけだ。利用者は、乗車した駅まで一周して戻り、同じ駅で降りるのみだ。つまり完全なアトラクションであり、移動手段ではない。

ところが、本家アメリカのディズニーランド内にある鉄道は、園内を一周し、沿線には4つの駅がある。どの駅でも乗り降り自由なので、園内の移動手段としても使える。東京ディズニーランドも、当初の計画ではアメリカに倣って複数の駅を設置する予定だった。

ところが、開園した1983年当時、「地方鉄道法」という法律があり、乗客の移動手段として利用する鉄道路線は、たとえ遊園地内であっても運賃やダイヤグラムの設定などを定めなければならなかった。すなわち、複数の駅で乗客が自由に乗り降りする場合は鉄道事業と見なされてしまい、気楽なアトラクションでは済まなくなるのだ。そのため、途中駅を設置して移動手段とすることは諦め、現在の姿になったのである。

法律が変わってから開業した東京ディズニーシーの鉄道

地方鉄道法は、国鉄が民営化されJR各社の誕生に伴い廃止となり、1986年12月、新たに鉄道事業法が公布された。法律が変わったことで、テーマパーク内での鉄道についても2点間輸送が可能になった。

それゆえ、2001年にオープンした東京ディズニーシーの中にあるエレクトリック・レールウェイでは、駅が2つ設置され、アトラクションとしてだけではなく、園内の移動手段としても利用できるようになったのである。
路線図
東京ディズニーシーを走るエレクトリック・レールウェイの路線図。2駅間を走っていることが分かる

過去の思い出となったニューヨークの高架鉄道

電車の駅
東京ディズニーシーにあるエレクトリック・レールウェイの始発駅アメリカン・ウォーターフロント・ステーション。車両のイラストが秀逸だ
こちらは、エレクトリックという名称でも分かるように汽車ではなくレトロな電車が2両編成で走行。1930年頃にアメリカの大都市ではやった高架鉄道をイメージしている。高架鉄道は、騒音や振動、高架下の治安など問題点があり、ニューヨークの場合は、地下鉄に取って代わられ、地下鉄が地上を走る区間を除いてほぼ廃止された。

シカゴでは今でも高架鉄道が残っているものの、車両は新しいものにリニューアルされている。それゆえ、ディズニーシーのレトロで赤い電車はノスタルジックな街の風景の一部として郷愁をそそる存在なのだ。電車と言っても架線やパンタグラフはなく、東京メトロの銀座線や丸ノ内線のような第三軌条集電である。

東京ディズニーリゾートには2種類の「鉄道」があるので、訪問する機会があれば、ややマニアックな視点で眺めてみると新たな発見があるだろう。
エレクトリック・レールウェイ
オールド・アーモリィ・ブリッジを走るエレクトリック・レールウェイ
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
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