2024年の秋ドラマの放送が、各局で開始されています。日曜劇場や月9などが毎クール話題になりますが、この記事では全てのドラマをチェックしている元テレビ局スタッフの筆者が、話題作以外にもスポットを当てておすすめドラマを紹介。
今回おすすめするのは、NEWSの小山慶一郎さんが主演を務める深夜ドラマ『高杉さん家のおべんとう』(中京テレビ・日本テレビ系)です。
『高杉さん家のおべんとう』はどんなドラマ?
『高杉さん家のおべんとう』は、柳原望さんによる同名漫画を原作としたドラマ。漫画は2014年度の日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞し、累計発行部数は156万部を突破している名作です。小山さんは連続ドラマ初主演を務め、地理学研究で生計を立てるために奮闘している主人公・高杉温巳(はるみ)を担当。芸歴24年で初の連ドラ主演となります。
同作は、独身・彼女なしの温巳が親を亡くした中学生のいとこ・久留里の未成年後見人となるところからスタート。久留里役は、ドラマや映画に多数出演し、スタジオジブリ作品『アーヤと魔女』の主人公・アーヤ役を担当したこともある平澤宏々路さんが演じています。
作品は温巳と久留里を中心に描かれ、お弁当や夕食を通して絆を強めていく2人の様子が見られます。温巳は両親を交通事故で亡くした過去を持ち、久留里の母親だった叔母の美哉が初恋の人。その美哉はシングルマザーとして久留里を育てていましたが、突然亡くなってしまいます。家族を亡くすという喪失感を味わった2人が、前を向きながら成長する姿をほのぼのしたストーリーで見せる作品です。
俳優としての仕事も増えるか!? ハマり役な演技に注目
今作で初主演を務める小山さんですが、自然体で魅力的な演技を披露しています。小山さんが演じる温巳は、何事にも一生懸命ながらどこか鈍感な全力空回り男。突然、久留里の保護者になるわけですが、思春期の中学生女子に悪戦苦闘して空回りを連発。ただ、そんな空回りも全ては久留里のためで、不器用ながら真っすぐな気持ちを感じられます。小山さんは、どこにでもいそうな青年をクセがない演技で丁寧に表現。自然体の演技は視聴者に違和感なく“自然に見せる”技術が必要です。小山さんは、これまで参加してきたドラマや映画の経験を生かして、原作漫画で描かれた温巳の魅力を引き出しています。
小山さんといえば、明治大学出身で、卒業式では模範卒業生に選ばれたほどの秀才。『news every.』(日本テレビ系)をはじめ、『ZERO×選挙』(日本テレビ系)に出演するなど、キャスター業でおなじみです。俳優としては、これまで『Ns'あおい』『ラッキーセブン』(ともにフジテレビ系)などに出演。舞台への参加もありますが、芸歴と人気を考えれば出演作は少ない印象です。
そんな中で、どの作品でも持ち前の頭の良さを生かして、キャラクターや設定を取り入れた演技ができています。今回演じる温巳も原作キャラの性格を理解した上で、セリフの強弱や表情で魅力的に表現。今後は俳優としての仕事も増えていくことが予想されるほど、ハマり役となっています。
小山慶一郎&平澤宏々路のコンビネーションが抜群
さて、『高杉さん家のおべんとう』の話に戻りますが、ヒロインを務める平澤さんの演技も秀逸です。平澤さんは、子役から活躍し、幼少期には大河ドラマも経験。2022年には、『仮面ライダーBLACK SUN』(Amazon Prime Video)で重要な存在となる和泉葵役を務め、主演の西島秀俊さんに負けず劣らずの迫真の演技で注目を集めた俳優です。最近では、『コタツがない家』(日本テレビ系)、『私の死体を探してください。』(テレビ東京系)で印象的な役を演じています。繊細な演技に定評があり、『高杉さん家のおべんとう』でも微妙な表情の使い分けで久留里を熱演中。久留里は、口数が少なく何を考えているのか分からない性格ながら、自分を持っていて節約家でしっかり者というキャラクターです。温巳と同じく不器用ながらも、思いやりがあり、曲がったことが嫌いな久留里を、平澤さんが丁寧に演じています。
特に、温巳のために料理を作っているときの期待と不安が入り混じったような表情が秀逸。小山さんとのコンビネーションも抜群で、今後はさらに仲が深まる2人の関係をどう表現していくのか楽しみです。
少し奇妙な同居生活を送りながらも、おいしいお弁当のおかずやさまざまな愛の形を見られる『高杉さん家のおべんとう』。小山さんと平澤さん以外にも個性的な俳優陣が脇を固めているので、まだ見ていない人はぜひTVerなどでの見逃し視聴をおすすめします。
この記事の筆者:ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。