今回インタビューに応じてくれたのは、2013年の1月から日本に在住している韓国人女性のミンさん。韓国にいるときに趣味で勉強した日本語を活用して、さまざまな日韓交流会で日本人との交友関係を築いてきたのだそうです。日本についてさらに興味が出てきたところ、長期出張で韓国に滞在していた今の夫と出会い、日本に来ることに。現在はかわいい息子とともに、家族3人で暮らしています。
「一生無理!」“ありえない”日本の食べ物とは?
日本以外にもニュージーランドへ留学したり、アメリカ、オーストラリア、香港などさまざまな国への渡航経験があるミンさん。日本在住歴も11年になり、来日当初は「えっ!?」と思った食べ物でも、現在では食べられないものはほぼなくなったと言います。そんなミンさんが、いまだに「絶対無理!」「一生無理!」だと言う、日本人が食べる“ありえない”ものとは……?
「生卵ごはん、です!」 生卵をごはんにかける「卵かけごはん」といえば、日本人にとって至福の食べ物の1つ。「TKG(卵・かけ・ごはん)」といった言葉もあるほど親しまれており、「卵かけごはん」専用の高級卵やしょうゆがあるなど、日本人が「卵かけごはん」にかける情熱は相当なものなのですが……。
「初めて生卵を食べる人を見たときは、衝撃でした! あんな食感のものを食べるの!? おいしいの? と、もうパニックです。今でも想像しただけで、パニックです」と、今後も自分が生卵を食べることは、想像もできないとのこと。
「韓国では、というより日本以外の多くの国がそうなのですが、卵は冷蔵庫に入れません。常温保存です。だから、日本で最初に冷蔵庫に入っている卵を見たときは驚きました。しかも、日本の冷蔵庫は“卵ケース”などという卵用のスペースまであるんですもん!」
えっ、「卵ケース」って全世界共通ツールじゃないんですか? インターネット上で「卵ケース」で検索すると、サイズも価格帯も実にさまざまな卵ケースがずらりと出てきますよ? さらに日本では「冷蔵庫のドアポケットに卵は入れない」など、卵の保存方法で論争が起こるくらいです。
無性に食べたくなる、 韓国式「卵かけごはん」
ミンさんによると、韓国にも「卵かけごはん」はあるそうです。しかし日本とは違い、「生卵じゃなくて、ごはんの上に目玉焼きがのっているもの。好みで黄身だけは半熟にしたり、完全に焼いたりして食べます。それにバターやマーガリンを添えるのが国民的な食べ方なんです」とのこと。さらに、「韓国式『卵かけごはん』は、朝鮮戦争が終わって、韓国駐屯していたアメリカ部隊から流れてきたバターを、当時食糧が十分に足りていなかった韓国人たちがごはんに添えて食べたことに始まったのだそうです」と言います。韓国式「卵かけごはん」は、ごはんの上に好みの焼き加減で焼いた目玉焼き、ごま油、しょうゆがのっていて、家庭によってバター派、マーガリン派が分かれます。ちなみに、ミンさんの家庭はマーガリン派でした。
「生卵に関しては、韓国人は基本的に食べないけれど、生肉を用いた『ユッケ』には最後に黄身だけをのせて食べることはあります。そう考えると、生の白身に抵抗があるのかも……。白身は焼いたりゆでたりしないと絶対に食べられません!」
名作映画『ロッキー』のワンシーンも、まさか……
ミンさんがニュージーランドに留学していた時のこと。1人の日本人留学生が二日酔いを解消するために、コーラに生卵を入れて一気飲み。それを見て、その場にいたニュージーランドの学生からも悲鳴が上がったのだそう。ミンさんも「生卵を飲むなんて、全世界1億何千万人中この人だけだ!」と思っていた矢先、「卵かけごはん」をおいしそうに食す日本人たちに出会い、さぞ驚いたことでしょう。
シルベスター・スタローンが主演を務める映画『ロッキー』(1976年制作)では、無名のボクサーでお金がないロッキーが、栄養補給のためにコップに生卵を5つ入れて一気に飲み干す場面があります。この場面では、アメリカの観客から嵐のように悲鳴が上がったという話を聞いたことがあります。
今まで、ロッキーの“漢気”に対する称賛の悲鳴だと思っていたのですが、今回のミンさんの話を聞くと、もしかすると、そうではないのかもしれませんね……。
この記事の筆者:福島 ゆき プロフィール
アニメや漫画のレビュー、エンタメトピックスなどを中心に、オールジャンルで執筆中のライター。時々、店舗取材などのリポート記事も担当。All AboutおよびAll About ニュースでのライター歴は5年。