そんな風に「性加害」で重い代償を支払うことになったサッカー選手がいる一方で、「性加害」が報じられても着々と「復活」に向けて動き出しているサッカー選手もいる。
フランス1部リーグ、スタッド・ランス所属の伊東純也選手だ。
性加害疑惑報道からわずか半年で広告に復帰
伊東選手は世界的スポーツブランド「プーマ」と契約をしており、2024年の1月1日には三苫薫選手、堂安律選手などとともに新しいキャンペーンに登場していた。それが『週刊新潮』(新潮社)に性加害疑惑が報じられたことで、プーマ側は公式Webサイトからインタビュー記事を取り下げるなどの対応をしていた。著名人やアスリートを広告などに起用する企業が、ブランドイメージを守るための「初動」として、このような対応をとることは一般的だ。
しかし先日、伊東選手がプーマに「広告復帰」を果たした。愛用しているスニーカーの新コレクションが発売されるということで、公式WebサイトやInstagramに登場して、以下のようなリリースも流された。
お笑い芸人の松本人志さんは、週刊誌で「性加害疑惑」が報じられただけで社会の批判を恐れるCM出稿企業が離れ、芸能活動の休業を余儀なくされているが、伊東選手はなぜこうも早く「イメージ回復」に成功したのか。伊東純也選手や海外選手着用の「KING(キング) ULTIMATE(アルティメット)」が登場!「FORMULA(フォーミュラ) PACK(パック)」を2024年7月18日(木)より発売
伊東選手といえば、準強制性交傷害などで刑事告訴した女性2人を「虚偽申告罪」で刑事告訴。さらにスポンサー契約を打ち切られたなどとして、この女性2人に対して2億円を超える損害賠償を求める民事訴訟を提起するなど「全面対決姿勢」を取ったことが大きな話題となったが、それが正しかったということなのか。
伊東選手が「イメージ回復」を果たせたわけ
結論から先に言ってしまうと、正しかった。しかし、伊東選手のような境遇になった人が全てこういう対応をすればいいというわけではない。伊東選手が海外クラブに属していたということが大きかった。日本サッカー協会(以下、JFA)が伊東選手を代表に呼ばなかった理由を「さまざまなステークホルダーの影響も考慮した」と述べていることからも分かるように、日本では週刊誌に「疑惑」が報じられただけで「みなし犯罪者」という扱いだ。これはJFAがそのように厳しい考えというわけではなく、「被害者がいる人間を擁護するのか」「事実が確定するまで起用すべきではない」というクレームが、スポンサー企業など関係各位に寄せられてしまうことが大きい。つまり、「同調圧力」に弱いのだ。
しかし、伊東選手が活動を拠点としているフランスは全く異なる。社会全体に「推定無罪の原則」が浸透しているので、被害者が何を訴えたところで「容疑」の段階で仕事が奪われるようなことはないのだ。
事実、所属するスタッド・ランスは、JFAが伊東選手の代表離脱を発表する2時間ほど前にリリースを発表。伊東選手の人間性や振る舞いに対し、これまで1度も疑問を感じたことがないとして「連帯」を示しながら、法的な進展を見守っていくという説明をした。
そして実際にそれを裏付けるように、伊東選手をスタメンで起用し続けた。7月にはクラブ初の日本ツアーがスタート、ジュビロ磐田、清水エスパルス、FC町田ゼルビア、ヴィッセル神戸などと対戦するので、伊東選手も日本のサッカーファンの前でプレーすることになる。もし伊東選手が国内クラブに所属していた場合、やはりスポンサーへの配慮などから起用することは難しかっただろう。