厚生労働省の「人口動態統計」によると、2022年の初婚年齢は女性が29.7歳、男性が31.1歳である。ところが、初婚のピークを見てみると男女ともに27歳。そこから婚姻率は年々低下傾向にあるが、都心で働く女性にとって 「27歳」という年齢は、結婚よりも大切なものがあるケースが多い。結婚願望はありながら「27歳の時に結婚しなかった」と語る2人のアラサー女性の声を聞いた。
「30歳までに結婚する」と思っていたけれど……
「いわゆる第2次結婚ラッシュが起こったのが27~28歳の時でしたね」こう語るのは、筆者の友人・里奈さん(仮名/32歳)だ。
「アラサーに差し掛かる頃に大学時代の友人がバーっと結婚したので、私も付き合っていた彼と結婚しようか迷ったけれど、結局別れてしまいました」
当時27歳だった里奈さんには、大学4年生から交際していたパートナーがいた。「彼と30歳までに結婚したい」とぼんやり考えていた里奈さんだったが、結局別れることになったという。パートナーの結婚に対する煮え切らない態度が原因だった。
「27歳の時、新卒で入った会社を辞めて、都内の別の会社に転職しようと思っていました。辞めたタイミングで結婚するのもいいのかな、と思っていたのですが、彼には結婚する気があまりなさそうで。同棲していたものの、いわゆる“マンネリ”というやつで、カップルらしいデートもなくレス気味。彼は営業職だったこともあり、夜遅くまで飲み歩く毎日だったこともあって、結婚の話は進まなかった」
2人の交際期間は5年。付き合い始めてすぐに同棲したため同棲期間は4年半だ。もともと大学の同級生だった2人は卒業後に交際をスタートしたのだという。
「親に紹介済みだったので、『えー! てっきり結婚すると思ってたのに別れるの!』とびっくりされました。でも自身のキャリアの話をして、心機一転、新天地で頑張りたいと伝えると納得していました」
別れることに対して、里奈さんのパートナーは特に驚きもせず「分かった」とひと言。里奈さんは「25歳くらいに一度彼の方から結婚話が出たけど、私がそのタイミングじゃなかった。そして今は彼も私もタイミングじゃない。たぶん彼も仕事が楽しくて、結婚はまだ考えられなかったのだと思う」と話す。
26、27歳は「もっといい人がいる症候群」になりがち?
「『もっといい人がいる症候群』に陥っていたのが、26~27歳です」こう話すのは、早紀子さん(仮名/32歳)。彼女は23歳からの4年間、仕事の関係で知り合った2つ上の男性と付き合っていたが、里奈さん同様、27歳の時に別れている。
「彼は優しいし、仕事も公務員で安定していて、今考えたら“結婚向き”でした。だけど、彼に物足りなさを感じてしまって」
26歳の時、早紀子さんは友人に人数合わせで誘われ、飲み会に参加した。それはいわゆる合コンだった。
「彼氏がいるから断るべきだとは思うけど、『どんな人がいるんだろう』って興味本位で。そこに来ていた男性たちが、”港区系”の華やかな業種の方たちで『こういう世界もあるんだ』って知ってしまった。なおさら今の彼がつまらなく思えたんです」
結局、27歳の時に彼と別れることになった早紀子さん。彼は早紀子さんと結婚を考えていたようだったが、早紀子さんは「仕事をもっと頑張りたい」という理由をつけて別れを告げたという。
その後、早紀子さんは別の合コンで出会った男性と交際。しかしすぐに破局してしまった。
「付き合うまでは優しかったけれど、付き合ってから優しくなくなって。その時、『あの時元カレと結婚しておけばよかった』って後悔した」
しかし元恋人にはすでに新しい恋人がおり、復縁したいという早紀子さんの願いはかなわなかった。早紀子さんは現在、マッチングアプリなどを活用して婚活をしている。
分別がついてしまったからこそ、結婚が遠のくのか
早紀子さんも里奈さんも、恋人との交際期間は4~5年と長い。「ゼクシィ結婚トレンド調査2023(全国推計値)」によると、付き合い始めてから結婚するまでの期間は、2~3年未満が「23.2%」と最も高い。次いで1~2年未満が「22.1%」となっており、結婚に至らなかった2人に比べ、結婚したカップルは交際期間が短いことが分かる。
俳優の故・樹木希林さんが「結婚なんてのは若いうちにしなきゃダメなの。物事の分別がついたらできないんだから」という言葉を残している。交際期間が長く、キャリアや経験を積み、まさに“分別がついてしまった”アラサー女性にとって、結婚という決断は簡単にできるものではない。
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この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。