脚本・宮藤官九郎さん、主演・仲野太賀さん、小池栄子さんで送る“救急医療エンターテインメント”ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)が7月3日より放送スタート。『不適切にもほどがある!』(2024年、TBS系)に続き、現代社会が抱える多様な議論に切り込んだキャラクター設定やテーマが注目を浴びており、初回放送後もSNSでは賛否入り混じったコメントが殺到しています。
第1話のストーリーをおさらいしつつ、寄せられた反響とともに今後の見どころを紹介します。
第1話のあらすじ
ところ新宿・歌舞伎町。NPO法人「NotAlone」の新宿エリア代表・南舞(橋本愛)が海外向けに歌舞伎町の魅力をアピールする動画を撮影していると、泥酔しているヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)と遭遇。南は盛大にゴミ箱へ突っ込み搬送されたヨウコに付き添い、歌舞伎町の路地にひっそりとたたずむ「聖まごころ病院」へ足を踏み入れます。そこには額から血を流したホスト・マモル(濱田和馬)も、他病院での受け入れ拒否により運ばれてきていました。
聖まごころ病院では、美容皮膚科医・高峰亨(仲野太賀)、内科・小児科医の横山勝幸(岡部たかし)、泌尿器科・性病科の田島琢己(馬場徹)、看護師長・堀井しのぶ(塚地武雅/ドランクドラゴン)ら個性豊かなスタッフが働き、新宿・歌舞伎町交番の地域課巡査・岡本勇太(濱田岳)が入り浸っていました。外科医不在の中、マモルは無事処置が完了。ヨウコは診療費を払わず翌朝帰ったものの、後日また病院に訪れ、海外医師免許がある元アメリカ軍医だと話します。
経営難の聖まごころ病院では、病院を続けたい3代目院長/元外科医の高峰啓介(柄本明)と、病院をつぶして金儲けを考える弟/不動産コンサルタントの高峰啓三(生瀬勝久)が骨肉の争いを繰り広げていました。外科医のヨウコに期待が高まるが、日本での医師免許は取得しておらず。そんな中、南から銃で撃たれ出血している男性・ムハマドを処置してほしいと連絡が入ります。
啓三の息子であり拝金主義に傾倒する亨は外科医がいないと拒否するも、難民申請が通っていないムハマドは他病院へ行くと強制送還されてしまうと南。動揺する医師たちを横目に処置を始めるヨウコ。彼女の豪快で雑な処置に圧倒されながらも、「貧乏人の命も金持ちの命も平等に助ける、それが医者」という言葉にハッとする亨。南の「私にとって社会は平等じゃない」という言葉も同様に心に引っ掛かっていました。ともあれ、“処置をしてしまった”ヨウコは無免許を黙認され、聖まごころ病院の外科医として住み込みで働くことになるのでした。
キャラ盛り盛りの面白さ×シビアな問題への切り込み
ホスト、路上売春、違法滞在、反社、トー横キッズ、LGBTQ等々、新宿・歌舞伎町を舞台に社会問題として表出しているテーマがてんこ盛りで詰め込まれていた第1話。NPO法人で弱者救済のために働き“平等”とは何か訴える南の裏の顔も示唆され、第2話以降で痛烈な皮肉として描かれる兆しが感じられました。
ストーリー展開や演出もまた猥雑で混沌とした歌舞伎町のイメージそのもの。キャラクターの濃い登場人物たちにより、テンポよく繰り広げられる会話の端々に埋め込まれた問題提起。本作でも“クドカン節”が堪能できるのではないでしょうか。
X(旧Twitter)では、「めちゃくちゃ面白いわ。俳優みんな演技うま過ぎ。脚本のテンポが良い」「めちゃ面白い上に、めちゃリアルでシビアな問題に切り込んでる。こういうやり方でやろうって企画がまずすごい」「それにしても皆個性強い!」「キャラ盛り盛りで面白かった」「役者さん達の素晴らしさよ…」など好感コメントが殺到。
一方、「社会的孤立や貧困や政治的問題を棚上げして、軽いノリで消費して良いのかなあ」「クドカンがこのまま社会の実態や『平等』というテーマを御し切れるとはとても思えない」「昨今議論されてるような話を扱ってるけど、まともに理解してないのになんでいっちょかむんだろう。全然違うテーマで面白い脚本作れるでしょ」など辛口意見も。
第2話では、南が“平等じゃない”ことを良い言葉として捉えていることが納得いかない亨は、「NotAlone」の活動に参加することに。一方、聖まごころ病院ではオーバードーズで運ばれたトー横キッズ・マユ(伊東蒼)や、「歌舞伎町顔面偏差値テストの結果発表!」で選出された田島医師をきっかけに波乱の展開が起こる様子。“社会的メッセージ”で語るか、“ドラマとしての面白さ”で見るかで賛否はさまざま。まずは個性豊かな登場人物たちが物語に沿ってどう動きだすのか期待です。
この記事の筆者:地子給 奈穂
編集・ライター歴17年。マンガ、小説、雑誌等の編集を経てフリーライターに転向後、グルメ、観光、ドラマレビューを中心に取材・執筆の傍ら、飲食企業のWeb戦略コンサルティングも行う。