年度当初から始まる運動会準備。体育主任に働き方のリアルを聞いた
そんなイメージのある運動会が、この数年で変化している。新型コロナウイルスの流行をきっかけに開催時間帯を短縮したり、種目を減らしたりした学校も少なくない。教員の負担は減ったのではないかと感じるが、実際はどうなのだろうか。
公立小学校で体育主任を務める中澤先生(仮名)に話を聞いた。
競い合う運動会から日々の成果を発表する場に
「私の学校では、運動会当日は8時半頃に開会式を始めて、11時半までにはすべての種目が終わります。その後、片づけをして12時までに児童は下校します。午前中で終わらせられると熱中症対策になりますし、お弁当が必要ないためご家庭の負担も少ないのではないかと思います」長野県の公立小学校で体育主任を務める中澤先生は、5月最終週の土曜日に実施された運動会についてそう振り返る。
中澤先生が務める公立小学校は、6年生以外はすべて単学級の小規模校のため、児童数が少なく、ひとつの種目は10分程度で終わるという。主な種目は、短距離走と表現種目。リレーや応援合戦はなく、チーム分けをして点数を競うこともない。
ここまで運動会がシンプルになった背景には、運動会そのものの位置づけが変化してきているのではないかと中澤先生は言う。
「コロナ禍をきっかけに、運動会は日頃の学習成果を発表する場のような位置づけになってきました。以前は何日もかけて練習をして、難易度の高い組体操などを披露することも多かったですが、それもありません。新年度になってすぐの運動会ということもあり、子どもたちに無理をさせすぎないような構成になってきています」
学級づくり×運動会準備×児童会顧問で超激務
今年度は6年生の学級担任を務めながら、体育主任と児童会顧問を兼務している中澤先生。プライベートでは一昨年度に第一子が誕生し、1年間の育児休暇期間を経て今年4月に職場復帰した。育児休暇を取得する前年度にも体育主任を担当しており、今年度は2年目となる。教員のなかでは比較的年齢が若く、体育が専門教科であることから、必然的に体育主任を任されることになるのだろう。とはいえ、その他の役割もあるなか、中心となって運動会の準備を進めていくのは大変さも多いのではないだろうか。
「運動会の内容は年によって大きく変わるわけではなく、用具の場所や全体像の把握等もできているので、体育主任を一度経験していれば、準備自体の負担は1年目より多少減りました。ただ私の場合は、6年生の担任と児童会顧問を務めているので、3つの役割を並行して進めなければいけないことがとてもハードでした」
各学校によって運動会の内容や進め方が異なることから、中澤先生も現在の学校へ異動した初年度に体育主任を任されたときは、運動会の準備にかなり疲弊したそうだ。
「私の学校の運動会は5月末に開催なので、当然4月も準備に追われています。4月は担任として学級づくりにも力を入れたい時期なので、そことのバランスを取るのがとても難しかったです」
計画、調整、全体指示…。体育主任が担う運動会準備
「5月に運動会が開催される場合は、前年度の2〜3月くらいに職員会議で『運動会基本計画案』を出します。年度が変わると人事異動があるので、あくまで叩き台として必要な係やタイムテーブル、当日までの大まかなスケジュールを教職員に共有します」
「運動会基本計画案」には、運動会の趣旨や目標、指導上の留意点やプログラム案などが記載されている。中澤先生の場合は、昨年度末まで育児休暇を取得していたため、前年度の体育主任がここまでの役割を担ったという。新年度を迎えてからは、中澤先生が具体的な役割分担や当日までのスケジュールを決め、教職員に共有した。
「年度によって児童の人数が違うので、どの種目にどれくらいの時間がかかりそうかを考えながら当日のタイムテーブルを決めていきます。この作業が意外と時間がかかるところです。また教職員向けのスケジュールも作成します。本校は職員数が少ないため、運動会終了後、児童下校までの時間でテントや机イスの片付け、サッカーゴールを元に戻すことなどを保護者の方に協力をお願いしています」
職員には、ロープ張りやポイント打ちなどのグラウンド整備、テント張り、種目ごとの用具や放送機材の準備・片付けなど、多岐にわたって指示・確認をする。
すべての準備を体育主任が行うわけではないが、円滑に運動会を進めるために、全体への指示を出していく重大な責任を担っている。無事に運動会を終えるまでは気の抜けない立場だろう。
この記事の執筆者:建石 尚子
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3カ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3カ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当