今年3月に結婚し、今月23日に京都の上賀茂神社で挙式した歌舞伎俳優の片岡愛之助(44)と女優の藤原紀香(45)が28日、東京の帝国ホテルで披露宴を行う。
歌舞伎俳優に嫁ぐことを「梨園の妻」と呼ぶが、これはどのような意味なのだろうか。歌舞伎について詳しいライターの宗像陽子氏がAll Aboutで以下のように解説をしている。
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梨園とは
宗像氏は「梨園」の意味について新明解国語辞典を引用している。
[唐の玄宗が、梨の木の有る庭園で音楽を教えたという故事から]「劇壇」の意の漢語的表現。[狭義では歌舞伎俳優の社会を指す](新明解国語辞典より)
梨園については上記のような項目があるという。劇壇は演劇関係者の社会。俳優・監督・演出家などの諸種のつながりのことで、つまり「梨園」とは歌舞伎俳優の社会を指すことになる。宗像氏は「『梨園の御曹司』といった言い方ならまだしも、『梨園の妻』という表現は日本語としてなんだか違和感があります」としながらも、すでに一般的な言葉として広く使われているのも事実で、“間違っている”と言い切るほどではないと説明している。
梨園の妻は何をしているのか
「梨園の妻」=「歌舞伎俳優に嫁いだ妻」が日々何をしているの。宗像氏は以下のような具体例を挙げている。
- 夫の仕事を円滑に進めるための対外的な手配
- 食事の心配り
- お金の管理(給料や盆暮れの付け届けなど)
- スケジュール管理(毎日同じ時間に家を出るサラリーマンとは違い、歌舞伎俳優は月ごとの出番によって出かける時間も違うため、調整がとても大変。秘書的な役割が求められる)
歌舞伎は家族総出の商売であり、そこの“おかみさん業”と考えていいかもしれないと宗像氏は述べている。
歌舞伎俳優の妻として求められること
そのほかにも歌舞伎俳優の妻として求められることがあるという。
中村橋之助の妻である三田寛子は新婚当初、茶道・華道はもとより、習字・マナー教室・江戸会席近茶流料理を習い、歌舞伎の歴史、しきたり、200にも及ぶ演目についても学んだという。
月に25日ある歌舞伎の公演では、少なくとも初日と楽日に、ご贔屓のお客様にご挨拶をするなど歌舞伎界特有のしきたりがある。ちなみに、故・十八代目中村勘三郎の妻・好江さんは、中村芝翫を父に持つ歌舞伎界の女性。生まれながらにして、さまざまなしきたりに馴染んでいたこともあって、夫の着物の整理、書き抜き(役者個人のセリフだけを書き抜いて1冊の本にとじたもの)、台本、資料の整理など全てをこなしていたそうだと宗像氏は説明する。
男の子が生まれれば、習い事の送迎も必須
夫の送迎だけではなく、子どもが生まれれば、習い事の送迎も必須という。男の子の場合、歌舞伎俳優としての自覚がない時分から否応無しに稽古に連れて行かなければならないという。
また、後継である男の子を授かることについても、妻たちは相当のプレッシャーを感じるようだという。男の子が生まれなければ、養子を取るなどして各家は伝統を守ってきており、愛之助も一般家庭から養子になっている。
主役はあくまで歌舞伎俳優、目立ちすぎはダメ
歌舞伎俳優の妻としてNGなこととして、宗像氏は「目立ちすぎること」を挙げている。主役はあくまでも歌舞伎俳優だからだ。
このように、歌舞伎俳優の妻として夫を支える「専業主婦」のイメージも強いが、歌舞伎界のしきたりにも慣れ、子どももある程度大きくなった後に、仕事を再開する例もあると宗像氏は説明する。
たとえば、三田寛子は最近テレビ出演を増やしており、富司純子も一度は芸能界から引退したが、引退から17年後の平成元年に本格的に女優に復帰している。また、坂田藤十郎の妻、扇千景のように、参議院議員となって国土交通大臣にまで務めている。
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