お笑いタレントの陣内智則さんが26日に放送されたMBS系「痛快!明石家電視台」に出演し、痛風を患っていることを明かした。デイリースポーツなどが報じている。収録前日に体に異変が起きたといい、陣内さんは「立てないですね」と述べ、痛みがあることを告白。原因には「親の遺伝」があると話した。
痛風は、どのようなことが原因で発症するのだろうか。また予防法などはあるのだろうか。生活習慣病に詳しい医師の井上真理子氏がAll Aboutで以下のように解説している。
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痛風の症状
「風が吹いても痛い」という意味の病名どおり、ひどい痛みが特徴的な痛風。主な症状は、骨折以上とも言われるほどの強い痛みで、これを「痛風発作」と言うと井上氏は説明する。症状は、足の親指の関節やくるぶしなどに起きることが多く、赤く腫れて激烈に痛むのが特徴という。
痛風の原因
井上氏によると、痛風は「高尿酸血症」という病気が原因で起きるという。
尿酸は、食物にも含まれる「プリン体」が体内で代謝されてできる物質で、通常は尿中に排泄される。排泄される前段階では血液に溶けた状態で存在しているが、尿酸の血中濃度が高い状態が続くと、血液に溶けきれず、関節などに結晶として溜まってしまうのだという。通常はないはずの結晶が関節などに溜まることで炎症を起こすと「痛風発作」と呼ばれる激烈な痛みを感じるのだという。こうした尿酸の血中濃度が高い状態を「高尿酸血症」というと井上氏は説明する。
高尿酸血症の原因・診断方法
高尿酸血症の原因としては、尿酸が過剰に作られること、もしくは尿酸の尿中への排泄が低下することが挙げられるという。例えば、食物として摂取するプリン体の量が多ければ尿酸はたくさん作られ、腎臓の機能が低下すれば尿酸の排泄が少なくなる。この他、遺伝的な要因や生活習慣が大きく関係していることがわかっているほか、利尿剤などの薬によって尿酸値が高くなることもあると井上氏は説明する。
尿酸の結晶は、血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えるとできてしまうため、尿酸値7.0mg/dlを超えた場合を高尿酸血症と診断するが、尿酸の値は変動しやすいため、複数回測定した結果で診断するという。
痛風発作と併発しやすい病気
高尿酸血症によって起きる病気は痛風発作だけではなく、以下の病気を併発しやすいという。
- 痛風腎
高尿酸血症に伴い尿中の尿酸が多くなり、腎臓で尿酸が結晶化して、腎臓の働きを低下させる。 - 尿路結石
尿中の尿酸が腎臓や膀胱などで結晶化し、結石が形成される(いわゆる尿路結石)。これが腎臓と膀胱をつなぐ尿管で引っかかると腹痛を起こす。 - 高血圧・脂質異常症・糖尿病などによる動脈硬化
最近の研究では、高尿酸血症が動脈硬化の進行に関与していることがわかってきたという。高尿酸血症の人は、高血圧や脂質異常症、糖尿病を高頻度で併発しており、これらが絡み合ってさらに動脈硬化が進行するという。
痛風の治療
井上氏によると、痛風の治療は、足の痛みに対する対症療法だけでなく、根本的原因である高尿酸血症改善のための治療も併せて行うという。痛風発作の再発を防ぐことはもちろん、腎機能障害を回避し、動脈硬化が進まないようにすることが大切だと述べる。治療の第一歩は生活習慣改善で、十分な改善が得られない場合には薬を処方するという。
痛風発作の治療・薬による痛みの緩和
痛風発作が起きた場合は、まず薬で炎症を抑える。痛みや腫れが消えるまで炎症を治める薬を続け、炎症が完全に治まってから血液中の尿酸濃度を下げる薬を使うという。炎症が治まっても尿酸値が高ければ、再び痛風発作を起こす危険があるという。薬は少量から始めて定期的な血液検査を行いながら3~6ヶ月かけて量を調節する。
痛風発作を繰り返す場合は、痛みの予兆があった時点で発作を抑える効果がある薬を使用することもあるという。
痛風発作の予防・改善のための食事療法
痛風発作の予防法として以下の注意点を井上氏は挙げる。
- 適正体重を維持する
- 食事は適切なカロリーを守り、食べ過ぎないことが鉄則
- ウォーキングなどの有酸素運動を1日30分程度、できれば毎日行う(急な激しい運動が痛風発作の引き金になることがあるので注意)
高尿酸血症改善のための食生活に関しては、以下の点を心がけてほしいと井上氏は述べている。
- プリン体を多く含む食品を摂り過ぎないよう注意(イワシやエビ、カツオなどの他、レバーやあんきもなどに多く含まれる)
- 水分を多く摂る
- アルコールを制限する
高尿酸血症の改善・治療方法
痛風発作を繰り返す場合、尿酸値にかかわらず薬が必要になるという。治療の目標値は6.0mg/dl。痛風発作を起こしたことがない場合は、尿酸値が8.0mg/dl以上だと薬での治療を始める基準になるという。
薬には、患者の症状に合わせて尿酸の産生を抑える薬か、尿酸の尿への排泄を促進させる薬のどちらかが選択されると井上氏は説明する。
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