御嶽山の噴火から2年 登山の際に注意すべきことや噴火対策は

戦後最悪の火山災害となった御嶽山の噴火から27日で2年。御嶽山では規制が緩和され始めているものが、日本には多くの「活火山」があり、それに対する監視体制や噴火などに備える姿勢は忘れてはならない。登山の際にすべきことや被害防止対策は何があるか。

戦後最悪の火山災害となった御嶽山の噴火から27日で2年がたった。麓の長野県木曽町立三岳小学校では正午前から犠牲者追悼式が行われ、噴火時刻の午前11時52分には参列者が黙とうした。

 

この噴火では、死者・行方不明者が63人となった。御嶽山の火山活動は低下傾向にあり、気象庁は噴火警戒レベルを2として、現在は火口から約1キロ圏への立ち入りを規制している。長野県王滝村も、御嶽山の入山規制を段階的に緩和しており、24日には御嶽山王滝口登山道の9合目まで立ち入りが可能となった。

  

御嶽山
噴火する御嶽山(撮影日:2014年9月28日)

  

御嶽山での登山が徐々にできるようになってきてはいるものの、日本には多くの「活火山」があり、それに対する監視体制や噴火などに備える姿勢は忘れてはならない。これに関してアウトドアの専門家や災害危機管理アドバイザーが登山の際にすべきことや被害防止対策をAll Aboutで解説している。

  

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日本には活火山が多くある

アウトドアナビゲーターの渡部郁子氏によると、全国には110の活火山があり、そのうち火山防災のために特に監視・観測体制の充実等が必要であるとして火山噴火予知連絡会によって選定されている活火山を、気象庁が24時間体制で監視しているという。

 

気象庁が24時間体制で監視している活火山は47火山だったが、2014年11月から八甲田山、十和田、弥陀ヶ原の3つが追加となり、整備をしているという。50火山は以下のとおり(★は追加)。

 

北海道地方

アトサヌプリ、雌阿寒岳、大雪山、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山

 

東北地方

岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、鳥海山、栗駒山、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、★八甲田山、★十和田

 

関東・中部地方

那須岳、日光白根山、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、乗鞍岳、御嶽山、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、★弥陀ヶ原

 

伊豆・小笠原諸島

伊豆大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、青ヶ島、硫黄島

 

九州地方

鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島

 

火山活動に関する警戒情報は気象庁が発表しており、全国110の活火山を対象に噴火警報・予報が発表されれば、気象庁サイト内の「防災情報」ページで確認できる。

 

しかしながら、御嶽山に関しては、気象庁で事前に火山性地震を計測していたものの、噴火の予兆とは判断されず情報が公開されなかった「想定外」の噴火だったと渡部氏は指摘。特に御嶽山は登山初心者も多く訪れる山で、噴火するまでは「警戒レベル1(平常)」だったことから、「御嶽山が活火山であることを知っていたとしても災害を予測し避けることは難しかったはず」と渡部氏は述べている。

 

登山するときの注意点・心構え

渡部氏は社団法人日本山岳ガイド協会理事の竹内敬一氏の言葉を引用しながら、以下のような注意点を挙げている。

  • 登山の際には危険をいち早く察知できるよう、周りの環境にアンテナを張り巡らせ、緊張感を持って臨むことが大切
  • 活火山に登るときに登山者自身が気をつけることは、噴火警報の確認、ガスによる立ち入り規制などを忠実に守ること
  • もし荷物に加えられるなら、携帯用の小ぶりの登山用酸素ボンベや花粉用のマスクを持ち歩くことで、ガスや火山灰から多少でも身を守ることができるかも

 

登山届を提出すること

災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は、登山届の重要性についても述べている。

和田氏によると、御嶽山の噴火の際、提出されていた登山届が救助隊の安否確認や捜索救助活動に大きく役立ったことから、各山域で登山届の義務化が進んでいるという。登山届には登山計画を立てることが必要となり、メンバーと共有することで、無理な計画をたてずに体力・装備・技術に合った登山を楽しむことにも役立つと和田氏は説明する。

 

登山届に必要な内容は、パーティの名称及び所在地、緊急の連絡先、目的の山域や山の名称、登山の期間、日程・行動予定、参加者名簿、装備や食糧などのリスト、持参する通信手段(携帯電話番号)などだという。日本山岳協会や管轄の警察署のホームページからダウンロード可能で、メンバーと共有した上で家族に渡すほか、現地の登山届ポストや登山地域の警察署などに提出する(オンラインで受付可能な地域もある)。

 

万が一噴火した時の対処法

和田氏は万が一、噴火した場合の対処法についても説明する。

  • 活火山周辺にいて噴火警報が発令された場合は、火口からの距離を置く退避方法が基本
  • 逃げる間もなく噴石や火山れきが降ってくる場合はコンクリート製の屋内へとすぐに避難(活火山の火口周辺に火山弾を防ぐ避難シェルターなど避難場所があるか事前に確認しておく)
  • なるべく稜線にあたる峰沿いに避難する方がリスクは低い
    御嶽山の噴火発生時には有毒性のガスを含む高熱の「火砕サージ」による被害が発生した。噴煙は山麓の形状に沿いつつ、低地に向かって下降する傾向があるため、沢(谷状になっている底の部分)に降りずに、峰沿いがリスク回避になるという。
  • 風向と共に噴煙の進行方向も目視しながら噴煙に巻かれないように避難方向を考える

 

活火山のリスクを考えながら観光すること

和田氏も、噴火予測は極めて困難だとしている。また、火口付近には火山性地震が頻繁に起きていない平常時においても、火山性の有毒ガスの発生など、一定のリスクは常に存在していると指摘する。

  

一方で、国内には多くの活火山が存在しており、火山活動を起こしながらも周辺の住民はその恵みを享受して、一定の距離をおきつつ共に生活していることも事実。火山立国とも言える日本において、火山活動は避けられない自然現象とも言えると和田氏は述べ、「リスクを正しく認識した上で、発災時の対応をすれば被害に遭うことはありません。公開されている情報を入手して、安全と考えられる範囲で温泉や観光を存分に楽しみましょう」と述べている。

 

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