そんな「恵方巻」について、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。
(今回の質問)
恵方巻とのり巻き・太巻きは何が違う? 恵方巻ロールでもご利益はある?
(回答)
節分に食べるのり巻き・太巻きを「恵方巻」と呼んでいて、通常のものだけでなく、特別な具材や巻き物も多いです。恵方巻自体が民間発祥で近年広がった習わしなので、恵方巻ロールでもご利益があるかないかは、本人次第です。
どういうことなのか、以下で詳しく解説します。
通常ののり巻き・太巻きと恵方巻の違いは何?
節分に恵方を向いて食べるのり巻き・太巻きを「恵方巻」と呼んでいます。通常ののり巻き・太巻きのほか、縁起が良い具材や特別な巻き物にすることも多いです。恵方巻の起源には諸説ありますが、もともとは「お新香」を巻いたのり巻きだったようです。それがすしの販促活動で広がる過程で、七福神にあやかり7種類の具が入った太巻きが望ましいとされるようになりました。そして、節分に恵方を向いて願い事をしながら食べるので、「恵方巻」などと呼ばれるようになったのです。
近年は、コンビニやスーパー、大手すし店などが毎年力を入れており、通常の恵方巻だけでなく、スイーツ業界でも「恵方巻ロール」などを展開。その中には、豪華さにこだわった具材や個性的な変わり種、巨大でとても丸かぶりできないサイズなどがあり、多様化が進んでいます。
恵方巻は、細巻き・中巻き・ハーフサイズでもいいの?
恵方巻は福を巻き込む巻きずしなので、縁が切れたり福が途切れたりしないよう包丁で切るのはNGとされ、恵方を向いて食べきるのが基本です。【こちらも読む→「恵方巻」の正しい食べ方は?】
太巻きが主流ですが、太巻き1本は食べきれないという人は、細巻きや中巻き、半分の長さのハーフサイズなどを用いるとよいでしょう。ハーフサイズの場合、包丁で切らないことにこだわるなら、完成した巻きずしをカットするのではなく、半分に切ったのりで巻きずしを作る方法があります。
「恵方巻ロール」といったケーキなどでもご利益はあるの?
節分の豆まきは、平安時代の「追儺(ついな)」という神事に由来します。一方、恵方巻は民間発祥で、もとは大阪の一部の人の娯楽だったものがすしの販促活動によって関西に広がり、コンビニやスーパーなどの商品として全国に浸透して、現在に至ります。恵方巻の食べ方(恵方を向いて、願い事をしながら黙って食べきる)やご利益も、民間で考案されたものです。恵方巻が登場したころは戸惑う人が多かったようですが、それが大勢に受け入れられて定着すると、節分の風習になっていきます。
最近販売されている「恵方巻ロール」なども同様で、新しいものをどう受け止めるかは人それぞれ。ご利益があるかないかはその人次第といえるでしょう。
この記事の筆者:三浦 康子
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。