恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第90回

空いてる車両がスマホで分かる!? 東京メトロの便利アプリ「列車混雑計測システム」を試してみた

11月8日から10日まで幕張メッセ(千葉県)で開催された第8回鉄道技術展。バラエティに富んだ展示で会場内はごったがえしていた。ここでは、鉄道の専門的なことにそれほど関心はないけれど、利用者にとって役に立ちそうなトピックを取り上げてみよう。

連載「鉄道雑学ニュース」
乗り物の域にとどまらず、見ても、撮っても、もちろん乗っても面白い鉄道の世界。知れば知るほど奥が深くて面白い鉄道に関する最新情報&雑学を、「All About」の鉄道ガイドで旅行作家の野田隆が自ら撮影した駅舎や車両画像とともに分かりやすく解説する。

11月8日から10日まで幕張メッセ(千葉県)で開催された第8回鉄道技術展。鉄道車両から信号、ホームドア、さらには各種システムのソフト開発に至るまでバラエティに富んだ展示で会場内はごったがえしていた。

かなり専門的なものもあるが、ここでは、鉄道の専門的なことにそれほど関心はないけれど、利用者にとって役に立ちそうなトピックを取り上げてみよう。
 
東京メトロの列車混雑計測システム

鉄道技術展での東京メトロのブース
列車混雑計測システムを紹介した東京メトロのブース

東京メトロのブースで注目を浴びていたものの1つに列車混雑計測システムがある。これは、すでに実用化されていて、全9路線で使用可能だ。これから乗ろうとする電車の混雑状況が、各車両ごと(10両編成なら1号車から10号車まで全ての車両について)に表示される。

列車混雑計測システム
列車混雑計測システムのアプリ画面の説明 資料提供=東京メトロ
混雑状況は、以下の4段階で色分けされる。

・ブルー=座席に座れる程度
・グリーン=ゆったり立てる程度
・オレンジ=肩が触れ合う程度
・ピンク=かなり混みあっている

どうして分かるのか?
しくみ
システム概要イメージ 資料提供=東京メトロ

列車混雑計測システムは、デプスカメラをホーム端に設置し、駅を出発する列車内の混雑状況を撮影する。撮影された映像からエッジサーバで深度情報をテキストデータ化し、クラウドサーバへ送信する。

クラウド上では、機械学習した人工知能(AI)により分析・解析させることで、駅を発車してから数秒で、列車内の混雑状況を号車毎に算出する。この技術を活用し、号車ごとのリアルタイム混雑状況をアプリ配信している。
 
全路線の全駅にカメラを設置するとなると膨大な費用がかかるのではないか? という心配があるが、映像などの機器はホーム1つに1台あれば全てを計測できるため、決して大がかりではない。エッジサーバやクラウドサーバの構成もシンプル、そして人口知能(AI)を活用することで、さまざまな車両や混雑状況にも対応できるという。

将来の新車導入時にも対応可能になっている。従来は、職員総出、つまり人力で測定していた混雑率と同等以上の信頼性で、始発から終電までの全ての時間帯をカバーして計測可能となっている。

1台のカメラの脇を先頭車から最後尾の車両まで通過すると、数秒で号車ごとに1%刻みの混雑率を算出するというから驚異的だ。

空いてる車両もロッカーも、運行情報も分かる

早速、全9路線の混雑状況が分かる「東京メトロmy!」という公式アプリをスマートフォンに入れてみる。そしてメニュー画面の最初にある運行情報をタッチしてみる。

画面の上に表示されるカラフルな9つのアルファベットを囲んだサークルが路線のシンボルマークなので、これから利用する路線を選んでみよう。ここでは、Zを紫色で囲んだ半蔵門線を例に解説する。

「東京メトロmy!」の画面
公式アプリ「東京メトロmy!」を開き、利用する路線を選択する

左右に路線図が延びていて、左のZ01渋谷から右にスクロールしていくとZ14の押上駅まで紫色のラインで結ばれている。その上下に長方形のアイコンが並んでいる。それが、今現在走行している電車を表わしている。

アイコンだけのものは各駅停車を表す。急行列車は急行と表示されているが、半蔵門線内は全ての駅に停車する。急行は半蔵門線から直通する田園都市線や東武線内で通過する駅がある列車だ。

各駅の車両ごとの混雑状況をチェックできる
各駅の車両ごとの混雑状況をチェックできる
この電車のアイコンをタッチしてみると、各駅間での混雑状況が一目瞭然だ。

列車ダイヤも表示される。アプリを見ていると、混雑状況は刻々と変化し、号車によってバラつきがあることも分かる。乗り慣れていれば、駅ごとに階段やエスカレータの近くが混雑したり、混む区間や比較的空いている区間も分かるだろう。各駅の時刻表や構内図も図示されるので便利だ。

このアプリでは、各駅のロッカーの空き情報も示される。大きなスーツケースをもった旅行者には有益な情報であろう。

そのほか、トイレの空室状況も緊急時には助かるが、まだ5駅(新宿、日比谷、有楽町、上野、溜池山王)しか活用できない。これからに期待したいところだ。

かように列車の混雑状況にとどまらず、いくつもの有益情報がもたらされるアプリなので、東京メトロのユーザーなら入れておいて損はないと思う。今のところ、混雑状況については、東京メトロのみだが、各鉄道会社に広がってほしいものである。
 
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
 
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