時事通信によると、厚生労働省は12日、失業中に雇用保険から支給される1日当たりの失業手当を、2017年度から大幅に引き上げる方針を固めたという。
1日当たりの失業手当は、離職前の6カ月間平均の賃金「賃金日額」をもとに算出されており、下限と上限が定められている。下限は最低賃金を上回ることを原則としているが、今年10月以降に適用される16年度の最低賃金が引き上げられた結果、最低賃金が賃金日額の下限を上回る逆転現象が起きる。
これを解消するため、賃金日額の下限を底上げし、併せて上限も上げる。給付率は変わらない可能性が高く、失業手当は最低額、最高額ともに100~200円程度引き上げられる見通しだと報じられている。
失業手当(失業給付)が引き上がる見通しだが、そもそも失業手当とはいつ、誰が、どのくらい、どのようにして受け取れるものなのだろうか。そして、その仕組みはどうなっているのか。この失業手当についてファイナンシャルプランナーの福一由紀氏がAll About内で以下のように詳しく説明している。
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失業手当は雇用保険制度の一部
福一氏によると、雇用保険は政府が管掌する強制保険制度であり、サラリーマン(ウーマン)は、基本的にはこの雇用保険に加入しているという。この雇用保険の中に、労働者が失業した場合、金銭面の不安なく就職活動が出来るよう給付される失業給付(基本手当) が含まれているのだと、福一氏は説明する。
誰が失業手当を受け取れるのか
この失業給付(基本手当)は雇用保険の被保険者が失業状態になると支給されるものだが、給付される条件は2つあると福一氏は述べる。
- 「就職しよう」という意思があるにも関わらず、就業できない失業状態であること
- 離職するまでの2年間で、雇用保険に加入していた月が通算して12か月以上あること(パートなどの日給計算の場合、雇用保険に加入していた月にカウントできるのは、賃金支払の基礎となった日数が11日以上の月)
また倒産・解雇等により失業した人や、特定理由離職者(契約期間が終了し更新がない人、病気や妊娠などの正当な理由で離職した人)は、離職するまでの1年間で、雇用保険に加入していた月が通算して6か月以上あれば支給されるという。
また、パートタイマーなどでも、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上引き続き雇用されることが見込まれるのであれば雇用保険の被保険者となり、正社員などと同様の条件で基本手当を受けることができると福一氏は説明する。
どのようにして給付額が決まるのか
福一氏によると、失業給付(基本手当)の支給額は、1日当たりの支給金額を「基本手当日額」として示しているという。
この「基本手当日額」を算出するために、まず「賃金日額」を計算する。この賃金日額は、退職前の1日あたりの給料で、退職日の直前の6か月に支払われた賃金(ボーナス等は含まない)の合計を180で割って算出した金額だと福一氏は説明する。この「賃金日額」のおよそ50~80%(60歳以上65歳未満については45~80%)が基本手当の支給額となるという。
失業保険の支給日数は勤務期間と年齢、退職理由による
失業した時に支給される失業保険の基本手当は、1日あたり「基本手当日額」が支給されるが、支給日数は退職理由と被保険者期間(勤務期間)、年齢によって変わると福一氏は説明する。
退職理由は、自己都合や定年である時と、会社の倒産や解雇など会社理由である時の2つに大きくわけられるという。また、就職困難者(身体障害者や知的障害者など)は退職理由に関わらず支給額が決められている。
まずはハローワークで手続きを
失業給付の支給を受けるためには、ハローワークで手続きの必要があると福一氏は述べる。
その時に、退職した会社から受け取った「離職票」が必要。「働く意思はあるがその職場では働き続けることが難しかった」といった内容の「離職票」を持って、ハローワークで手続きをし、離職理由などが認められたら、基本手当の受給が決定する。
不正受給にはペナルティ
失業給付は誰でも受け取れるものではないと福一氏は言い、「失業給付(基本手当)は、働く意欲がある人が安心して再就職活動を出来るようにと支給されるもの」であり、「はじめから働く気がなく就職活動もしていなかったり、内緒で働いたりしている人が受給しているのがわかったら、ペナルティが課せられます」と述べている。そのペナルティは、それまで支給された手当を返還するのに加え、支給を受けた2倍の金額の納付が命ぜられるという。
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