自閉症の多くが、胎児の神経の発達に関わる特定の遺伝子の異常が原因とする研究成果を九州大学の研究グループが発表した。西日本新聞などが報じている。
報道によると、これまで自閉症の原因に関係すると考えられる遺伝子は数多く報告されていたが、具体的な因果関係は不明だった。中山敬一主幹教授らの研究グループは、自閉症患者の多くが「CHD8」という遺伝子の異常があることに注目。遺伝子異常のマウスを作り出し、行動を観察したところ、正常なマウスに比べ、自閉症の傾向がみられたという。さらにマウスの脳内を調べてみると、「CHD8」に異常があることで、「REST」というたんぱく質が異常に活性化することが分かった。この「RESTの働きを抑えるような薬剤が開発されれば、自閉症の治療薬になる可能性がある」と期待が高まるという。
ではそもそも、自閉症とはどのような病気なのか? 間違った知識やイメージを持っている人も多いかもしれないが、メンタルヘルスの専門家である中嶋泰憲氏は、自閉症の原因と特徴的な症状について、All Aboutで以下のように解説している。
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自閉症の発病頻度と原因
自閉症の発病頻度は1000人中3人程度。健常者との境界は明確でなく、どこまでを自閉症と見なすかにより数字は異なる。周辺症状まで含めれば発病頻度は1%近くになるとも言われ、その意味で自閉症は決してまれな疾患ではない。日本自閉症協会によると2014年時点で国内の患者数は約 36万人、男女比はおよそ4対1となっている。
自閉症のおもな症状
自閉症の大きな特徴は以下のような内容で、これらは通常は3歳頃までに現われる。
1. 周囲との交流困難
乳幼児期、親が近づいて来ても目を合わせない、笑わないといった兆候がよく見られる一方、人見知りはあまりしないという特徴がある。自閉症の子供は相手の気持ちを理解することが苦手なので、集団に入る際にスムーズに友だちを作れないことが多い。
2. 言語発達の遅れ
「言葉を発さない」「言葉を発し始める時期が遅い」など言語発達にかなり遅れが認められ、言語力の不足をジェスチャーや表情で補うことも得意ではない。また言葉を発しても意味をなさない、あるいは一般的でない言葉使いをする…といった事もしばしば。
3. 限定的な興味の対象と動作の反復性
興味が特定の対象に限定されやすく、またある特定の動作をいわば儀式的に繰り返す傾向があり、自分の行動パターンが変わることに強い拒否反応を起こすことも。積み木を一定のパターンに並べ続けるといった反復的動作や、食事の後で入浴するといった普段の順序が逆になることでパニックを起こすなどの行動がみられる。
早期発見と適切な支援が重要
知的レベルは自閉症の重症度を分類する上で重要な指標となり、自閉症の約70~80%は知的レベルが低下していると判断されうる「IQ70以下」だが、中には一般の人にはない特殊な能力を持つ人も。例えば記憶や計算といった分野でいわば天才である事があり、自閉症の一形態として「サヴァン症候群」と呼ばれる。
全体の約20~30%は知的機能に低下がない「高機能自閉症」といわれ、子供の知的機能が正常であるがゆえ、親は自閉症の症状を間違った躾のせいなどと誤解して、自閉症に気づくのが遅れることも。
通常生後18ヶ月~2歳までに周りの大人は何らかの問題が子供にあると気付くもの。自閉症も他の病気と同じく、治療を早く開始すればするほど良好な予後につながるので、当てはまる症状に気づいたら、専門家に相談することをすすめたい。
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