歴代のオートクチュール・コレクション200点以上を着こなしたパフォーマーたちが、ダイナミックなダンスで彼の波瀾(はらん)万丈の人生を描く舞台。半世紀近くにわたって世界のファッションをけん引してきたゴルチエが、本作に込めたメッセージとは? 開幕直前の彼へのインタビューを、城田優さんらスペシャル・ゲストを迎えて行ったレッド・カーペットやプレスコールの舞台写真を交えながらお届けします。
幼い頃に憧れた、老舗のミュージック・ホール
「僕は昔から、今回のようなショーを創ることを夢見ていました。きっかけは幼いころ、テレビで観たフォリー・ベルジェール(パリ9区にある老舗のミュージック・ホール)の映像。幕が上がって、大きな羽根をつけた女性が踊る姿に“なんてきれいなんだろう、僕もこの演出をやってみたい!”と憧れました。
そこで、ナナという名の僕のテディ・ベアに、家にあったホコリ取りの羽根をつけて踊り子に見立てました。そしてイチゴのカゴにカーテンをつけ、ひもで引っ張るとナナが現れるようにして遊んでいたんです。僕の中には、ファッションよりも先に、ショーに対する興味がありました」
伝説のコーン・ブラ1号はマドンナではない?
「ファッション・デザイナーとしての原点も、テディ・ベアのナナ。3歳の時、叔父からクリスマスにもらって……本当はお人形が欲しかったのに、男の子だからとクマになってしまったのだけど(笑)……僕はナナにいろんなおしゃれをさせました。
皆さん、1990年に僕がマドンナにデザインしたコーン・ブラ(先端がとがった前衛的なブラ)を覚えているでしょう? 当時は世界的な話題になりましたが、実はあれを最初につけたのはマドンナではなく、クマのナナなんです(笑)。ある日、祖母が読んでいた新聞に下着の広告が出ていて、その中のとがった形状のブラジャーが面白く見えました。そこで段ボールを巻いて似たものを作り、ナナにつけてみたのが、コーン・ブラ第1号。
他にも、当時の映画で流行していて、祖母が時々髪の毛につけたりしていたブルーのアイシャドーをナナに塗ったり、テレビの手芸番組で布地を切って真ん中に穴を開ければスカートができるんだと理解し、まねて作ったものもナナに着せました。今でもナナは、新聞紙にくるみ、靴箱に入れて大事に持っていますよ。散々いじったから、保存状態はあまり良くないけれど(笑)」
「変わっていることはすてきなこと」
「半世紀のキャリアを通して、ファッションについて表現したいことはやり尽くしたと思ったので、2020年にデザイナーとしては引退しましたが、子どもの頃のショーに対する情熱を思い出してぜひ形にしたいと思い、舞台に着手しました。モノづくりが好きで、ナナにどんな衣裳を着せたら似合うかなと考えるのが好きだった男の子が、大きくなってピエール・カルダンのもとで修行し、デザイナー・デビュー……という僕の軌跡を、ダンスや映像、音楽を組み合わせて描いています。
プレタポルテのショーではいつも自分で選曲していたので、今回も僕自身が音楽を選んでいます。テーマ曲的に登場するのは、ナイル・ロジャースの『Le Freak』。フリークはシック、変わっていることはすてきなこと、自分らしくいることが大切だという本作のメッセージを凝縮させたタイトルです。
また、リズミカルでダンスと合わせやすい70年代後半から80年代のディスコ・ミュージックを、全般に使っています。最近、若い人たちの間でこの頃の音楽が注目されているので、僕らの世代と若い世代、両方に楽しんでもらえるのではと思っています。
振付に関してはマドンナなどのライブを手掛けているマリオン・モーティンが、多彩なダンスを振り付けてくれています。
僕のお気に入りは、一緒にブランドを立ち上げたパートナー、フランシスとの出会いのシーン。2人でボーダーのシャツを着て踊る姿がとてもロマンティックで、若い頃の僕らをうまく表現できたのではないかと思っています。また、今回の日本公演では初披露のシーンもあります。終盤にパフォーマーたちが集まってポージングをし、ファッション・ショーさながらの光景が登場しますので、ぜひ楽しみにしていてください」
「あらゆるものが美しい」
「このショーを通して皆さんに届けたいのは、サプライズ。こういう表現もあるのか! と驚き、ワクワクしてほしいですね。美の定義についてはいろいろな捉え方があって、中には僕の表現に否定的な方もいるでしょう。でも、いろいろな意見があっていい。僕自身、あらゆるものが美しいと思っています。だからこそ、過去のショーでは体形も国籍も、いろいろなモデルに出演してもらってきました。最近のファッション界を見渡すと、1つのトレンドに縛られることなく、ある程度の幅広さ、自由さが感じられますが、SNSの普及で、誰かが自分のおしゃれを発信すると他の誰かに否定的なリアクションをされ、その人がそれ以上前進できない、という傾向があるのが気になります。でも、発信し続けることで少しずつ前進する。それが今のファッションなのかもしれません。
今回のショーをご覧になった方が、自分らしく生きていいんだ、人生を楽しもう! という気分になってくれたらとてもうれしいです」
<公演情報>
ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』5月19日~6月4日=東急シアターオーブ(東京都渋谷区)、6月7~11日=フェスティバルホール(大阪府大阪市北区)
【おすすめ記事】
・城田優、同級生・小池徹平との懐かし制服ショット披露! 「似合いすぎてて尊い」「高校生役絶対いける」
・70歳・小柳ルミ子、スタイル抜群&圧巻の美脚を披露! 「年齢など感じさせない」「綺麗のひと言」
・山崎育三郎「こんな作品を待っていた!」心震えるミュージカル『ファインディング・ネバーランド』開幕
・『教場0』第7話 白石麻衣「どうも好きになれない女」演技が秀逸! 滝本美織の「狂ってる舞台女優感」にも絶賛の声
・生田絵梨花、小池徹平と仲良くポーズを決め“美男美女”ツーショット! 話題の舞台へのゲスト出演を報告