進学校の力を測る上で、注目を集めるのが何といっても難関大学の合格実績。
しかし、私立大学の合格実績は、1人の生徒が複数校受験して合格をもらえることも少なくないため、実際の進学者数が分かりにくくなっています。それに対して、東京大学の合格者数=ほぼ進学者。そのため進学実績の指標として分かりやすく、毎年注目を集めるのでしょう。
今回は、2023年入試の東大合格者数ランキングとともに、少し違った角度で進学実績を考察するランキングの見方を紹介します。
※ランキングは、受験と教育の情報サイト「インターエデュ・ドットコム」提供(URL: https://www.inter-edu.com/univ/)。掲載中の数値は、最終数値ではない可能性があります。
開成は昨対比23%減!? 2023年東大合格者数ランキングTOP10
2023年も東大合格者数ランキングの1位は開成で、42年連続です。他の上位校の顔ぶれも、だいたい例年通りといった感じです。
1位の開成は、現役・浪人合わせて148名の合格者を出しました。2022年は193名だったため、合格者数だけを見ると“23%減”と大きく減らしています。
しかし過去4年の合格者数を見ると、185名(2020年)→144名(2021年)→193名(2022年)→148名(2023年)と推移していて、「隔年現象」のようになっています。
さらにこの人数を卒業年によって数え直すと、119+38=157名(2020年卒)→106+56=162名(2021年卒)→137+30=167名(2022年卒)で、波は小さくなります(実際には2浪以上の人も含まれているかもしれませんが、割合は小さいので全員1浪として計算)。
つまり開成は、現役・浪人を合わせて一学年で毎年160名くらいの生徒が東大に合格するようですね。このように数字を見る角度を変えると、見えてくるものが変わってきます。
聖光がついに開成を逆転! 2023年東大“現役合格率”ランキングTOP10
卒業生の数に対する東大現役合格者数の割合でランキングを並べ直すと、次の表のようになります。現役生の割合を見ると、浪人をして東大を目指す生徒が多いのか、それとも現役志向が強いのかが見えてくるのではないでしょうか。これまでも筑波大附属駒場は、卒業生数に対する東大合格者の割合で見れば1位でした。2023年もそれは変わらずです。
注目すべきは聖光学院で、現役合格率で見ると開成を超えました。2022年も開成33.83%に対して、聖光33.77%と肉薄していたのですが、2023年はついに逆転です。また、桜蔭も2022年は30.26%で2023年は29.00%と、開成に近い数字が続いています。
そして、聖光・桜蔭ともに過年度卒業生の合格者数が少なくなっており、現役志向の高さがうかがえます。もし浪人して東大を目指す生徒がもっといたら、合格者数ランキングは上がるかもしれないですね。
灘の東大+京大現役合格率は44.09%、国公立大の医学部医学科現役合格率は20.91%
灘は関西にある学校のため、京都大学への進学者数の割合も高くなっています。インターエデュの独自調査によると、2023年入試では42名の京大合格者を出していて、うち現役生は31名、現役合格率は14.09%。東大合格者数は86人、現役合格率は30.00%で66名ですが、東大に合格できるレベルの学力をもっている生徒数ということで考えると、もっと多くなるといえるでしょう。東大+京大現役合格率は44.09%です。
各学校には、東大・京大と並ぶ難関校に進学する生徒もいて、学校の文化によっては「医学部志向」の高さも変わってきます。灘はここでも高い合格率を誇っており、インターエデュの独自調査によると、国公立大の医学部医学科の現役合格率は20.91%にもなります。
東大合格者数ランキングだけを見れば、進学実績が全て分かるというものではありません。これはランキング上位以外の学校でも同じことです。東大・京大以外の国公立大学や、難関私立大学、さらには海外大学など、卒業生はどういう進路を取る傾向があるのか、さまざまな角度から数字を見て学校の文化を考えてみるとおもしろいのではないでしょうか。
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菊池洋匡 プロフィール
中学受験専門塾 伸学会代表。開成中学・高校・慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。算数オリンピック銀メダリスト。子どもたちの成績を上げるだけでなく、勉強を楽しむ気持ちや困難を乗り越え成長していくマインドを育てる方法を確立。生徒と保護者に「勉強には正しいやり方がある」ということを一貫して伝え続ける。
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