「投資信託」という言葉は、銀行や郵便局(ゆうちょ銀行)でよく見かけるようになり、馴染みがあるかもしれませんね。今回は「投資信託」のメリットやデメリット、そしてあまり知られていない投資信託の魅力に迫ります。
解説はセゾン投信 代表取締役会長CEOの中野晴啓さん、教えてもらうのは筆者の娘、現役高校生です。
投資信託を一言で表現するなら「ジャングルジム」?
筆者の高校生の娘(以下M):中野さん、すごくストレートに聞いてしまいますが、投資信託を一言で言うと何ですか?
中野さん:そうですね。一言で表現するなら「みんなでお金を集めて投資をする集団投資スキーム」です。もっと分かりやすくいうと、ジャングルジム。
M:ん? ジャングルジム……?
中野さん:投資信託の話をするとき、いつも思い出すのはジャングルジムなんです。これは僕の実体験でもあるんですが、小学校のときに校庭にジャングルジムがなくて、作りたいという要望が出たんです。でも学校はお金を出せないし、みんなでお金を出し合うのも大変という話になって、だったらロータスクーポン(一定の点数を集めると商品と交換ができるクーポン。現在は交換終了)を集めようとなりました。
僕も頑張って集めましたし、みんなも同じだったんでしょうね。結果的にジャングルジムと交換できるだけのロータスクーポンが集まったんです。1人では決してできないことでも、みんなで協力すれば欲しいものが手に入る。そういう経験をしています。それと同じなんですよ、投資信託は。
たったひとりで100社の株を買うのは、ほぼ不可能。でもみんなが協力すれば……
M:要するに、みんなで協力するということですか?
中野さん:同じ考えの人が集まって、みんなで協力をして目標を達成しよう。この考えです。株で考えた場合、1人で100社の株を買おうと思っても資金の面でほぼ不可能ですよね。莫大な資金が必要になりますから。もちろん、世の中にはそれだけの資金がある人もいますが、ほんの一握りですよ。でも同じ考えの人がたくさん集まってお金が集まれば、100社の株を買うことができます。
M:目標を達成できる!?
中野さん:そう。ここで大切なのは、みんなが同じ目標を持つことです。投資信託の場合、基本的には長期で運用するのが目的なので、それを共有していることが大切なんですよね。もし途中で「もういいや、やめちゃえ」という人が出てきたら、せっかくそろった足並みが乱れてしまって、これからやろうとしている運用ができなくなってしまうかもしれません。
投資信託を運用するのはプロで、自分が望む運用を極めて高いレベルで行ってくれています。途中でやめてしまうのは、その邪魔をすることになってしまうんですよ。
投資額に関係なくリターンは同じ。差別がないのが投資信託
M:他に投資信託のいいところはありますか?
中野さん:投資額に関係なく、リターンの率が同じという点です。もちろん、リターンの金額自体は違いますよ。でも100万円を投資した人のリターンが10%で、1万円の人は3%ということはないです。みんな同じだけリターンを得られる、つまり平等ということです。
このことはあまり強調されないのですが、僕はこれが投資信託で最も優れている点だと思っています。差別がない世界。だから、みんなが気持ちよく参加できるし、続けることができるんです。
さて、次回は今何かと話題になる「NISA」「つみたてNISA」についてです。この2つ、実はあまり知られていない大きな違いがあったんです。
教えてくれたのは……
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野 晴啓(なかの はるひろ)
1987年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信株式会社を設立。2020年6月より現職。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売しており、顧客数は約15万人、預かり資産は4300億円を超える。一般社団法人投資信託協会理事。公益財団法人セゾン文化財団理事。著書に『預金バカ』(講談社+α新書)、『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』(ダイヤモンド社)など。
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