「投資をする」となった場合、パッと思い浮かぶのは「個別株」かもしれません。例えば「トヨタ自動車」や「任天堂」など、一度は聞いたことがあるような会社の株を購入することです。
投資をする方法は「個別株」だけではなく、「投資信託」もあります。銀行や郵便局に行くと、「投資信託」のポスターが貼られていることもあって、言葉は聞いたことがある……という人も少なくないでしょう。
この2つは比較されることもあるのですが、本当に考えるべき「違い」は大人でもなかなか知っている人は少ないかもしれません。高校生の娘が、セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEOの中野晴啓さんに「個別株」と「投資信託」の違いを聞いてみました。
投資信託は「本日のおすすめ握り10貫」みたいなもの
筆者の高校生の娘(以下M):最近、ネットを見ていると「投資信託」という言葉をよく目にします。投資信託とは何ですか?
中野さん:投資信託は、簡単にいえば株の「パッケージ」です。お寿司で例えるならば、投資信託は「本日のおすすめ握り10貫」みたいにいろいろなネタが入っているパックを買うイメージです。マグロが1貫、いくらが1貫となっていて、いろいろなネタが食べられますよね。だから、仮に自分があまり好きではないネタが入っていても、他の大好きなネタでカバーできます。これは投資の世界でいうところの「リスクコントロール」に近いですよね。
でも投資先は投資信託の他にもあって、例えば「トヨタ自動車」とか「任天堂」などです。1つ1つの会社の株は「個別株」と呼ばれています。さっきのお寿司でいうならば、「マグロだけ10貫」みたいな感じですね。同じ1000円を支払う場合、全部同じネタにするのが「個別株」、いろいろなネタが入っているおすすめセットを買うのが「投資信託」です。
個別株、投資信託を選ぶ時の違いは「目的」
M:個別株に向いている人、投資信託に向いている人で違いはありますか?
中野さん:向き不向きではなくて、目的の違いです。投資信託は、長期的な視点で資産運用をすることが目的です。根底にあるのは「将来のため」という考えなんです。例えば、親が子どもの大学進学のために投資信託を活用することもありますし、老後のために資産を作っている人もたくさんいます。Mさんはまだ高校生なので、老後と言われてもピンとこないかもしれませんが、40年後、50年後を見据えることが投資信託のベースにあります。
一方で個別株の場合には、株取引で一発当てよう、大儲けしようと思って買うことも少なくありません。イメージとしては短期的な取引です。もちろん、中には個別株を長期で持っている人もいますよ。
M:個別株の場合、その会社が大好きだからという理由で買うこともありますよね?
中野さん:本当にその会社が大好きで、株価は全く関係ない、株主になりたい! と思うなら、個別株を買う意味はあります。でもそれはあくまで気持ちの問題ではないでしょうか。資産運用やリスクのことを考えると、1つの銘柄に集中してしまうのは、損失の確率を上げることに直結します。それはちょっと危険かなと、僕は思いますね。
個別株と投資信託では、投資する人の目的が違ってくるとのこと。ここで気になるのは、それぞれのメリットやデメリットですよね。それに関しては、次で詳しく解説してもらいましょう。
教えてくれたのは……
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野 晴啓(なかの はるひろ)
1987年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信株式会社を設立。2020年6月より現職。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売しており、顧客数は約15万人、預かり資産は4300億円を超える。一般社団法人投資信託協会理事。公益財団法人セゾン文化財団理事。著書に『預金バカ』(講談社+α新書)、『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』(ダイヤモンド社)など。
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