日本ペアが悲願の金メダル獲得
7月26日(月)に行われた東京五輪・卓球混合ダブルス決勝で、日本の水谷隼・伊藤美誠ペアと中国の許昕(キョキン)・劉詩雯(リュウシブン)ペアが対戦しました。中国ペアに先に2ゲームを連取されたものの、3ゲーム目からは日本ペアが巻き返し、最終7ゲームでは8連続ポイント、最後は伊藤選手のサービスエースでゲームセット。「卓球王国」中国の牙城を崩し、日本組が日本卓球史上初の金メダルを手にしました。
決勝戦はまさに手に汗握る試合でしたが、今回の五輪で初めて卓球の試合を観た人も多いのでは。解説者が語る「ツッツキ」「フリック」「表ラバー」など専門的な言葉に疑問を抱いた方もいるでしょう。そこで今回は、小学校~高校まで10年間卓球を続け関東大会に2回出場した私が、初心者向けに卓球のラバーについて簡単に解説します。
卓球のラバーは主に3種類
卓球ではラケットにラバーと呼ばれるゴムのシートを張りますが、ラバーは主に「裏ソフトラバー」「表ソフトラバー」「ツブ高ラバー」の3種類に分かれます。ラケットに貼るときは両面に同じ種類のラバーを貼るもよし、それぞれ違う種類のラバーを貼るもよし、どちらでも構いません。
また、水谷選手や伊藤選手が使用しているシェイクハンドラケットの場合、親指側の面を表面(もしくはフォアハンド)、反対側の面を裏面(もしくはバックハンド)といいます。
ラバーの名前とラケットの裏表の呼称が似ているため少々ややこしいですが、例えば「裏ソフトラバー」をラケットの「表面(フォアハンド)」に使用することは何ら問題はありません。「表ソフトラバー」をラケットの「裏面(バックハンド)」に貼るのも同様です。
1:裏ソフトラバー
裏ソフトラバーは表面がつるつるしていて、ボールとの接地面積が大きいため回転をかけやすいのが特徴。3種類のラバーの中では1番メジャーで利用者も多いです。
今回の混合ダブルスの水谷選手や許昕選手、劉詩雯選手も使用しており、ラケットの両面が裏ソフトラバーであることを「裏裏(うらうら)」と呼ぶことも。
2:表ソフトラバー
裏ソフトラバーとは一転、表ソフトラバーは表面に凹凸があるのが特徴です。ボールとの接地面積が少なくなる分、球離れが速く、相手の回転の影響を受けづらい性質を持っています。
伊藤選手はバック面に表ソフトラバーを貼っていて、決勝では、表ソフトラバーの長所を生かした速いバックハンドや逆チキータ(強烈な横回転をかける打法)で相手を翻弄していました。
3:ツブ高ラバー
ツブ高ラバーは表面に無数のツブツブがあり、表ソフトラバーと似たような形状をしていますが、基本的には、ツブ高ラバーの方が表ソフトラバーに比べてツブが倒れやすいという特徴があります。
ボールがラバーに当たってツブが倒れることで不規則な変化が生まれ、相手が戸惑うような返球をすることができるのが強みです。主にカットマンと呼ばれる後方守備型の選手によく使われています。
卓球のラバーは特徴もカラーも実にさまざま
今回は3種類のラバーを紹介しましたが、実はほかにも「アンチラバー」という異色なラバーがあったり、ピンクやグリーン、ブルーなどカラフルなラバーも登場してきていたりします。
なお、ラバーの色や貼り方、大会で使用できる商品などは公式ルールでしっかりと規定されています。2012年10月25日に発売されたNumber815号(※1)で水谷選手が「卓球界に蔓延る不正ラバー問題」について告発しましたが、ラバーの「後加工」は国際卓球連盟(ITTF)によって禁止されています。
この「不正ラバー問題」、卓球経験者なら一度は耳にしたことがあるはずですが、卓球初心者の方々に端的に説明するならば、この不正は、補助剤と呼ばれる魔法の液体をラバーの裏側に塗りラバーを膨張させることで、ラバーの能力を飛躍的に向上させるドーピングのことです。
どんなことにおいても“ルールを破ってズルして勝つこと”はいけないはずですから、きちんと規則を遵守してフェアプレーで楽しみたいですね。
参考
東京五輪2020 公式HP( https://olympics.com/tokyo-2020/ja )
※1:Number Web<日本卓球の至宝、覚悟の告発>
( https://number.bunshun.jp/articles/-/293736 )