梅雨明け後も突然の雨が心配
長雨の季節が終わりを迎えいよいよ夏本番です。しかし真夏に心配なのが突然の雨、いわゆるゲリラ豪雨です。さっきまで晴れていたと思いきや、急に土砂降りの雨に降られて困ったことがある人も多いのではないでしょうか。「夕立」のように夏の風情を感じるものだけではなく、近年では道路の冠水や川の増水、時には土砂災害を引き起こす極端な雨の降り方になってきています。実際、1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨の降る回数は年々増加しています。ゲリラ豪雨の「予兆」とは? 積乱雲の特徴を知ろう
突然の雷雨に備えるには「雨の降る予兆」を知っておくことが役立ちます。雨を降らせる雲にはいくつか種類がありますが、激しい雨や雷雨をもたらすのは「積乱雲」と呼ばれる雲です。名前に「乱」という字が入っているように、天気を「乱す」雲です。この雲は強い上昇気流によって発達した背の高い雲で、高さ15キロメートルを超えることもあります。成長中の積乱雲はモクモクとしたカリフラワーのような形をしています。空を見渡してみて積乱雲が見えたら、その後は天気が急変する予兆です。できれば普段から空を観察することを習慣づけ、積乱雲が見えたときにはその周辺で雨が降っていないか「雨雲レーダー」をチェックしてみましょう。雨雲が自分のいる地域に向かって動いているときはすぐに頑丈な建物に避難するなど安全な場所で過ごすようにしてください。
降水確率だけでは分からない!? 天気予報の注目ポイントは?
気象予報士としておすすめしたいことは、天気予報を確認して備えることです。雨具を持つかどうか判断するのに多くの人が利用するのが「降水確率」だと思います。しかし降水確率だけで、局地的な雷雨があるかどうかを判断するのは実は意外と難しいのです。たとえば7月15日の東京の降水確率は30%でした。これは同じ予報を100回したときに、そのうち30回雨が降るという意味です。この数値を高いと考えるか低いと考えるかは人それぞれですが、注意したいことは降水確率が低いからといって、雨の降り方が弱いわけではないということです。
実際、7月15日には関東各地で降水確率は20~40%ほどでしたが、あちらこちらで雷雨が起こり道路の冠水も発生しました。「降水確率の高さ」と「雨の降り方の強弱」は全く関係がなく、降水確率100%でもシトシトとした弱い雨が降ることもあるのです。
「局地的な雷雨」のキーワード
では天気予報のどんなところに注目すれば局地的な雷雨に備えることができるのでしょうか。2008年に流行語にも選ばれた「ゲリラ豪雨」という言葉はいきなり集中豪雨が発生し天気が急変する様子を分かりやすく表していますが、気象庁では予報用語として使用していません。インパクトがあり伝わりやすいですが、私自身も予報の解説をするときはこの言葉を使わずになるべく丁寧に正確な情報を分かりやすく伝えることを心掛けています。
局地的な雷雨が起こりそうなときに気象予報士の解説でよく登場するのは、「上空の寒気」です。なぜ夏の暑い季節に冷たい空気の話をするのかというと、積乱雲は上空の空気と地上付近の空気との温度差によって発生し、この差が大きいほど発達しやすく大雨をもたらしやすいためです。これからの季節、天気予報で「上空の寒気」というフレーズを耳にしたら、その後に続く詳しい予報を確認するようにしてみましょう。