3人目が欲しいけれど、家計が心配で踏み切れない
3人目の出産願望はあっても、家計のことを考えるとなかなか踏み切れない……というご家庭も多いのではないでしょうか。
今回のご相談者は、神奈川県在住の4人家族のご主人様です。現在2人のお子様を育てていますが、すでに家計に余裕はないと感じていらっしゃいます。
ご相談内容のポイントは、
- 共働きになる場合、奥様に「いつから」「いくらの収入」があれば、老後まで心配なく暮らすことができるのか
- 3人分の大学費用をきちんと準備することができるのか
という2点です。
そこで「3人目のお子様が生まれた」と仮定して、奥様の収入変化に対する将来の家計収支をシミュレーションで確認してみましょう。
ご家族情報
シミュレーションを行うご家庭の前提条件は下記の通りです。
家族構成
- 夫(39歳):外資系サラリーマン(年収800万円)
- 妻(36歳):専業主婦
- 第1子(6歳):幼稚園年長
- 第2子(4歳):幼稚園年少
- 第3子(2022年に出産と仮定)
現状の貯蓄と支出
<貯蓄>
現在の貯蓄:200万円(預貯金)と130万円(児童手当の累計)
<支出>
住まい、保険、教育費を除いた毎月の生活費:25万円(これ以上の節約は難しい)
<特別支出>
帰省・旅行など:年30万円、家具家電費:年10万円
今後の収支の見通し
- 夫の定年退職は60歳。退職金は2,000万円の見込み。
- 2022年に車を買い替える予定。予算300万円(下取り価格100万円を含む)、その後は8年ごとに買い替えのご希望あり
- 車検は2年ごとに12万円、自動車保険料は年5万円
住まいについて
- 2019年に新築分譲マンションを購入(頭金800万円、住宅ローン:3,000万円、30年全期間固定1.19%で借入、毎月返済額は9万9,000円)
- 毎月の管理費・修繕積立金:2万1,000円、毎月の駐車場代:9,800円
- 固定資産税:6万円
- 火災保険料(10年)と地震保険料(5年)はあわせて一括払い:17万円
- 夫50歳の時点でリフォームを予定(予算300万円)
- 祖父母は遠方で暮らしている
保険について
- 夫:定期死亡保険(65歳満了、保障額1,000万円、年間保険料4万5,000円)
- 夫:終身医療保険(65歳払い済み、入院日額1万円、年間保険料6万5,000円)
- 妻:終身医療保険(65歳払い済み、入院日額5,000円、年間保険料3万3,000円)
- 学資保険は未加入(保険料を払い続けられるか不安だったため)
教育費について
- 進路は3人とも「私立幼稚園→公立小学校→公立中学校→公立高校→私立大学(文系)」を想定
- 習いごと費(幼稚園〜中学2年生):1人あたり毎月7,000円
- 塾の費用(中学3年生〜高校3年生):1人あたり毎月1万5,000円
- 大学進学のため、児童手当全額を普通預金で貯めている。足りない分は奨学金の利用も視野に入れている。
現状のまま、第3子が生まれた場合のシミュレーション
それでは、第3子が誕生した後も奥様が専業主婦のままの場合、将来の収支はどうなるでしょうか。
シミュレーションを行った結果、ご主人様が64歳時点からマイナスが続く結果となりました。
60歳で退職金が2,000万円入ってきたものの、60〜64歳まで毎月の家計収入が0であること、住宅ローンの返済が残っていること、また、第3子が大学在学中で教育費の支払いが続くことなどから、ガクッと貯蓄額が減ってしまいます。
3人分の教育費はなんとか支払うことができますが、リタイア後の生活は苦しい状況が続きそうです。
奥様の収入はいくらあればいいのか?
それでは、老後にゆとりをもって暮らすためには、奥様に「いつからどのくらいの収入」があればいいのか、2つのケースをみてみましょう。
▼ケース1:第3子が幼稚園に入園時点でパートで働く
まずは、第3子が幼稚園に入園した時点で奥様がパート勤務する場合をみてみましょう。
幼稚園のお迎えに間に合うように、勤務時間は平日9~13時の週3日で年収は約65万円(時給1,100円)、60歳まで働くと仮定します。
このように、老後のキャッシュアウトは防げていますが、金融資産額200万円前後の期間が72歳から約10年間ほど続いており、少し心許ない結果となりました。
この働き方のメリットは、税金と社会保険のどちらも扶養対象のため、ご主人様の所得税計算において配偶者控除38万円が差し引かれ、なおかつ奥様の社会保険料が免除されるという点です。
また、比較的時間にゆとりがあるため、奥様は子育てに集中することができます。
しかし老後資金のことを考えると、お子様の手が離れてからパート時間を増やすなど、何かしらの対策が必要といえるでしょう。
▼ケース2:第3子が2歳の時点でフルタイム勤務
2つめは、第3子が2歳になった時点で奥様がフルタイムで働く場合です。家庭を優先させたいという思いから、正社員にはならないフルタイムパートを選択しました。
勤務時間は平日9~17時の週5日で、年収は約220万円(月収約18万円、時給1,100円)、60歳まで働くと仮定します。祖父母は遠方暮らしのため、頼る相手がいないことから、小学校の間、長男と次男は学童保育へ通い、第3子は2歳から保育園へ預けます。
シミュレーションの結果、ケース1では心許なかった老後資金も、奥様がフルタイムで働くことで約3,000万円をキープすることができました。
この資産額であれば、ゆとりのある老後生活を送ることができますし、祖父母の介護といった突発的な大きな支出にも対応することが可能です。
+αの対策
今回のシミュレーションでは比較しやすいよう、奥様の収入のみで対策を取りましたが、その他の資産を増やす対策として「つみたてNISAやiDeCoを利用した資産運用」もとても有効です。
特にiDeCoは掛金が全額所得控除の対象となるため、ケース2のような共働きのご家庭ではより大きな税金面のメリットが得られます。
例)ケース2で、ご夫婦が共に掛金2万円/月でiDeCoを始めた場合、1年あたりの税制優遇額
・ご主人様(39歳〜開始)……7万2,000円
・奥様(40歳〜開始)……3万6,000円
※iDeCo公式サイト「かんたん税制優遇シミュレーション」を利用し試算
https://www.ideco-koushiki.jp/simulation/index.html
つまり、1年間で世帯合計10万8,000円もの所得控除が受けられるのです。
ただし、iDeCoやつみたてNISAを利用して資産運用を行う場合、元本割れのリスクがある点には注意が必要です。奥様の収入が増えて、家計に余裕が生まれてから運用を始めるというのも一つではないでしょうか。
まとめ
今回のシミュレーションで、年収が800万円あっても子どもを3人育てるのは簡単ではないということがわかりました。しかし、決して不可能というわけではありません。今回の結果を一つの目安として、それぞれのご家庭に合った働き方をみつけてみてください。
家族が増える喜びは、何ものにも代えがたいものです。できることから前向きに取り組んでいきましょう。
この記事を執筆したのは……
金井 優子(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
兵庫県出身、藤沢市在住。新しい分野への挑戦が好きで、CA、フリーアナウンサーを経てFPに。現在は年子男子の育児をしながら、FPとして活動している。出産後の家計管理に奮闘した経験から、子育て世代に寄り添うFPを目指している。