コロナ禍の東京を描いたTwitter小説が大きな注目を集めている。
件の小説『東京ソーシャルディスタンス』を執筆したのはウェブライターの黒猫ドラネコさん(@kurodoraneko15)。
百合子は冷たく言った。
— 黒猫ドラネコ(@kurodoraneko15)April 26, 2021
「東京に来ないで」と。
彼女が「電気を消して」と囁くと、眩いほど赤く輝いていたレインボーブリッジすら闇夜に溶けていった。
固く約束した三つは今も覚えている。
でも、五つあった物は何だったか、今の僕には思い出せなかった。
(小説『東京ソーシャルディスタンス』より)
その限りなくドラマチックで絶妙に皮肉めいたタッチにSNSユーザー達からは
「こ、これがセンスの塊……」
「この“東京にこないで”は男は行かないと後悔するやつですね」
「主題歌は小田和正に1票」
など数々のコメントが寄せられている。黒猫ドラネコさんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):今回の作品を投稿されたきっかけをお聞かせください。
黒猫ドラネコ:小池都政への風刺です。と、言いたいところですが、ただのノリと勢いです。以前に「東京アラート」についてツイートした際も結構伸びました。その時と同じように、苦しい日々を送られている皆さんに、少しでもクスッと笑っていただけたらと思いました。
東京アラートが出ましたが、これまで私が見てきたデータから、このままだと2週間後は確実に6月中旬になります。そこから2週間どんなに頑張っても7月になってしまいます
— 黒猫ドラネコ(@kurodoraneko15)June 3, 2020
中将:実際の小池百合子都知事やソーシャルディスタンス政策から感じる殺伐さとは180度異なるドラマチックさが熱いですね……。
黒猫ドラネコ:報道された小池都知事の「東京に来ないで」が、まるで親しい人との別離を感じさせる発言だったので、悲しくもおぼろげながらセクシーさが浮かんでくる物語にぴったりだと考えまして。と、言いたいところですが、ただのノリと勢いで書きました。
中将:これをベースにもっと長編に仕立て直す予定はないのでしょうか?
黒猫ドラネコ:期待の声もいただいたのですが、ただのノリと勢いが通用するのは一発目だけで、調子に乗ると寒くなるのでやらないと思います。趣味で長編小説や読み物を書いていますので、私の文体を気に入っていただけたら是非フォローしてそちらを読んでいただけたら幸いです。
中将:反響についてご感想をお聞かせください。
黒猫ドラネコ:これだけ拡散されたにもかかわらず、ほとんど肯定的な反応をいただきました。ノリと勢いで済まされないので少しだけ言わせていただければ、このコロナ禍で、ネット上には公衆衛生に影響を及ぼすような荒唐無稽な陰謀論やいたずらにワクチンを忌避させるような悪質な情報が出回っています。
そうしたデマが広がる要因は、多くの人に支持されるような方策を立てたり、強いメッセージを発信したりできないリーダーや政治への不信があるのではないでしょうか。小池都知事には、今回の茶化すようなツイートが拡散されないようにもっと頑張っていただきたいと思っております。
黒猫ドラネコさん
Twitterアカウント:https://twitter.com/kurodoraneko15
インターネットやSNSが普及し政治に対する市民の監視が強まった現代にあって、小池都知事のようにかけ声だけ大きいような政治スタイルはいささか時代遅れのものとなっているのかもしれない。茶化されることを嫌がる政治家は多いが、本当に迷惑を受けているのは茶化す隙のあるような政治をされる市民、国民の側なのだ。