自由な気風のヨーロッパにもブラック「規則」が?
近ごろ日本では、理不尽な「ブラック校則」が話題になっていると聞きます。「ツーブロック禁止」「ブラジャー禁止」などに始まり、「下着が既定色の白であるかを、男子生徒もいる前で目視確認する」といった人権に関わるようなものまであるのだとか。
もちろん極端なものは改善の余地がありますが、日本社会では人と違っていたり、集団の中で一人だけ目立つことは、異端視されがちなことから、世間から学生を守るためにも、学校側が厳しいルールを課すのはある程度やむを得ないのかもしれません。
一方、私の住むヨーロッパは比較的自由な気風だといわれていますが、「ブラック校則」のようなものは存在するのでしょうか? 私がこちらで暮らす中で出会った、厳格な規律や、「えっ!?」と目を見張るような風変わりなルールまで、紹介していきたいと思います。
某欧州系エアラインの就業規則
私が勤めていた2社目の欧州系エアラインでの就業規則の一部。
1. アイシャドウは4~7トーンのブラウンのみ(たとえ碧眼でも、ブルーは不可)。
2. 口紅の色は、唇の地色より2トーン暗い色まで
3. 爪の白い部分の長さは2mmまで
4. 髪を染色している場合、根元の地毛の色は1cm以内であること
こうした身だしなみ規定は、統一性を重んじる日系・アジア系航空会社では恐らく自明なのでしょう。しかし、私の在籍していた1社目の欧州系エアラインでは、水色のアイシャドウを勧められたり、紅い花の髪飾りをつけて乗務しているCAもいるほど緩い職場環境でしたので、同じ欧州系でも2社目の厳格さには随分と驚かされたものです。
5. ワキ毛を剃ること
頭上の荷物棚を開閉する際に、制服の半袖からワキ毛が見えているクルーでもいたのでしょうか? 大人の女性に向かって「ワキ毛を剃れ」はいくら何でも過干渉だと思いましたが、女性の権利については日本より先進的なヨーロッパのこと。マドンナ母娘のように、「敢えて体毛を剃らない」リベラル派の女性を見据えた上での規則でしょうか!?
6. フライト前にシャワーを浴びること、毎日髪を洗うこと
7. 洗濯された清潔な制服を着用すること
この二つも、随分と人を食ったルールだと憤慨しましたが、ヨーロピアンのシャンプー回数が異様に少ないこと(週1~2回の女性などザラ)や、使用済みのバスタオルを洗わずに何度も繰り返し使う習慣などを知ってしまった今となっては、会社側としても譲れない事項だったのだろうと理解できます……。
オーストリアの軍律
永世中立国のオーストリアでは徴兵制があるため、私の夫も一定期間、兵役に就いていたのですが、そこでも独特の軍紀があったそうです。
1. 靴は常に艶を出しておくこと。靴クリームを靴底にまで塗らないこと
ソールの際までクリームを塗る規定ですが、靴底に付いてしまうと雨天時に床が汚れるので不可。
2. 髪が耳と襟につかない長さであること、スキンヘッド禁止
軍人といえばスキンヘッドのイメージを勝手に抱いていましたが、NGの国もあるのですね。
3. 自分の制服をすべて同じ大きさに畳んで棚に収納すること。畳んだ服を横に並べて収納する際には、指2本分の間隔を空けること
緊急出動時や暗闇の中でも素早く準備できるように、だそうです。
4. 常に櫛(くし)を携帯すること
音楽の都では、軍人にもエレガントな装いが求められているのでしょうか?
5. 書類の髪色欄には、(たとえ黒髪でも)茶髪と記入すること
「世の中に黒髪は存在しない」というのが、その理由なのだとか。ヨーロッパの人はよく、「焦げ茶の瞳は存在するが、黒い瞳は存在しない」といいますが、それと同じ理論でしょうか?
スイスのとあるアパートの入居者規約
規律の厳しさや細かさにかけては、日本を上回るとも劣らないスイス。夫が一時期暮らしていたアパートの入居者規約とは……。
1. 夜の10時以降はシャワーとトイレを使用しないこと
流水音が近所迷惑。入浴は朝派も多いので、困らないのでしょうか。トイレの夜間使用禁止はあまりに暴論、というか拷問。
2. 騒音の出る家電(洗濯機、乾燥機、掃除機など)は、日・祝は使用不可
清潔さより静寂を重視する様子。
3. 日曜の13時~15時は休息時間なので静かに過ごし、中庭で子供と遊ばないこと
子供にとって厳しい社会です。
4. 1日2回換気すること
住居の密閉性が日本とは比較にならないほど高く、カビやすいのが原因。でもわざわざ規則に盛り込むようなことでしょうか?
5. これがスイスのやり方です。文句を言うのではなく、慣れてください
おっしゃる通り。これが異文化社会でやっていく上での黄金律です!
私の周りでは、話題のブラック校則ほど過激なルールは見当たりませんでしたが、それでも海外で企業や団体に所属していると、不可思議な規則に出くわす機会は少なくありません。不合理なものは別としても、海外に住んでいると、奇想天外な規則を愉しんでしまうくらいの余裕が必要なのかもしれませんね。