「生理の貧困」とヨーロッパの月経カップ事情

長引くコロナ禍と相まって、日本では、若者の5人に1人が生理用品調達に苦労したことのあると話題になっていました。生理用品を購入する代わりに、トイレットペーパーや布類で代用したり、交換頻度を落として不衛生な状態になってしまったり……これまで見逃されがちだった女性特有の悩みにようやくスポットライトが当たり、日本政府も今年度予算の予備費から約13億5000万円を支援することを決めたそうです。
 

同様の状況は私の住むヨーロッパでも議題に上がっており、英スコットランドでは、公共の建物における生理用品の無料提供を義務化する「生理用品法」が可決されたり、ドイツでも生理用品の消費税を贅沢品向けの19%から日用品の7%へと減税したりなどと、「生理の貧困」対策が少しずつ進められています。
 

ヨーロッパの月経カップ事情

ところで、「生理の貧困」の救世主的存在として、しばしば話題に上がる月経カップですが、実際にはどれほどの女性が使用しているのでしょう。
 

既にご存知の方も多いでしょうが、月経カップはお椀型をした主にシリコン製の生理用品で、折りたたんだものを膣の中に挿入して使用します。取り扱いには練習を要するものの、何年も繰り返し使えるので経済的であるうえ、ナプキンやタンポンのように使い捨ててゴミを増やすこともないため、ヨーロッパでも画期的アイテムとして注目度が上がっています。
 

また、こちらでは体のラインがはっきりと出るパンツルックを好む女性が多く、スポーツに勤しむアクティブな女性人口も少なくないため、タンポン派が主流です。14~60歳のドイツ人女性を対象とした統計では、タンポンの使用率は何と71%にも上り、これは3人に2人が使用している計算となります。そんな土壌があるので、同じく膣に生理用品を挿入する月経カップにも抵抗がないのかと思いきや、普及率は意外にも低く、僅か15%に留まっています。(2020年、Forsa統計)
 

月経カップが普及していない原因としては、

  • 生理について積極的に情報交換しない
  • 使い方がよくわからず、つい使い慣れた従来品を買ってしまう
  • 店舗で実際に見て購入したいが、オンラインと比べてバリエーションが少ない、もしくは店舗に売っていないので買いづらい

などがあるようです。
 

加えて、「本当に漏れない?」「タンポンと月経カップ、どちらが良い?」といったドイツ語の記事も散見されるなど、未知のものを前に二の足を踏む女性が少なくなさそうな印象でした。
 

月経カップ使用者の声

月経カップに躊躇する女性が相当数いる一方、実際に使用したドイツ人女性たちからは、絶賛の声が多く見られました。一部紹介すると、
 

「月経カップはタンポンと違って、経血を受け止めるだけ。膣内の有用な水分までも吸収してカサカサに乾くことがないし、膣内フローラの状態が改善された気がする」

「無駄なゴミが減って環境に良い」

「付け心地が良く、長時間装着してもまったく臭わず、(タンポンのような)紐を気にせずトイレに行けるし、ずっと多くのメリットがある。シャワーもスイミングも1000倍快適!」

「タンポンは綿からの残留農薬が心配だけど、月経カップは医療用シリコン製なので、アレルギーでもない限り安心」
 

などと、快適性や環境への配慮を挙げる声が目立っていました。
 

他方、デメリットとしては、
 

「体に合ったサイズや素材、使用感の商品を、色々試して見つける必要がある」

「取り扱いに少々の練習を要する」

「漏れた。月経カップ1個がタンポン1年分の値段なので、もう1個別の商品を買って試すのは気が引ける」
 

といった、自分にぴったりの商品を探す手間や費用、取り扱いの難しさなどが多いようです(※いずれも使用者たちの個人的な感想です)。
 

「エコ・節約・サステイナブル」と、ヨーロピアンの大好物が三拍子揃っているにもかかわらず、普及率が伸び悩んでいるのは、やはり実際に体験する機会や、知識を得る場がまだまだ十分でないからだと思われます。
 

EU全体の女性の20%が使用すれば、1年間で10万トンものゴミを減らせるとの試算が出ていますし(2019年、ReZero mit Zero Waste Europe)、初期投資さえすれば、生理の貧困問題も軽減してくれるであろう月経カップ。日本でも、学校や公民館などで、安全な使用方法をレクチャーするとともに、国が女性1人につき1つ無料配布してくれたら、声を上げられずに困難の中にいる多くの女性たちが助かることでしょう。女性がハンディキャップを背負うことなく輝ける世界が、一刻も早く整うことを願っています。