白色に赤色、ましてやMサイズにLサイズ……結局何が違う?
編集者が最近1人暮らしを始め、スーパーで買い物するようになったという。そんな彼の目下の悩みは卵にたくさんの種類があること。彼はただ卵が欲しいだけなのだが、色、サイズなどさまざまに分類された卵コーナーを見ていると何を選んでいいかわからなくなり、何も買えないままスーパーを後にしてしまうのだそうだ。
たしかに卵は鶏卵だけでもいろんな種類がある。殻が白いもの、赤いもの、その中間のピンクのもの、黄身の色が薄いもの、濃いもの、有精卵と無精卵、サイズもSSからLLまで。これらの間にいったいどのような違いがあるのか即答できる人は少ないと思う。
実は「殻と黄身の色」は大して重要じゃない
まず殻の色だが、これは鶏の品種によって異なる。白は白色レグホンなどの白玉鶏、赤はロードアイランドレッドなどの赤玉鶏、ピンクは白玉鶏と赤玉鶏をかけ合わせた鶏種などである。
日本では赤い卵を高級と見る傾向があるが、これは単に赤玉鶏の産卵量が白玉鶏にくらべ若干少ないことが価格に反映されるだけで、栄養価や味とは何の関係もないらしい。
また、黄身の色は飼料の色素に影響を受けるため、パプリカ、マリーゴールドなどカロチノイド色素を多く含んだものを混ぜれば濃い黄身になる。しかし、殻の色と同様、黄身の色は栄養価や味とは関係ない。
卵を云々するのにもっとも重要視される殻、黄身の色が卵の本質とは関係ないなんて、日本人がいかに見た目に左右される民族かがよくわかるエピソードではないか。
一番のポイントは「サイズ」と「有精卵か無精卵か」
卵の内容について考えるなら、真に気にすべきはサイズと有精卵か無精卵の違い。鶏は年を取るにつれより大きな卵を産む傾向があるが、黄身のサイズはほとんど変わらない。大きな卵ほど白身が多いということだ。
黄身と白身のバランスは料理を作る上で大変重要なポイント。目玉焼き、玉子焼きなど黄身の美味しさが重要な料理は小さな卵、メレンゲを作りたいなら大きな卵という具合に使い分けるのがよろしかろう。
有精卵か無精卵の違いもそれだけで栄養価や味が変わるわけではないのだが、有精卵として販売するには公正取引委員会の「複数の成雌鶏に複数の成雄鶏(雌100羽に対して雄5羽以上)を混飼し、自然交配可能な飼育環境(平飼い・放飼い)にある場合」(『鶏卵の表示に関する公正競争規約及び施行規則』より(※1))という規定をクリアする必要がある。
もちろん平飼い、放し飼いならなんでもいい、無精卵はよくないというわけではないが、わざわざ手間やコストをかけて有精卵を出荷しているという事実はその業者の鶏の飼育方針の参考にはなるだろう。
卵の栄養素、味は鶏の健康状態、飼育環境に大きく左右される。スーパーの卵コーナーで得られる情報は限られているが、本記事でご紹介した情報を頭に置いていただければ、件の編集者も、読者のみなさんもベストなチョイスをしていただけると思うのだが。
※1:鶏卵の表示に関する公正競争規約及び施行規則(https://www.jpa.or.jp/keiran_root/pdf/rules150710_01.pdf)
参考
農林水産省(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/0911/spe2_01.html)
JA全農たまご株式会社(https://www.jz-tamago.co.jp/)