これ全部東野圭吾の韓国語翻訳版です。撮影したのは町の小さな書店。東野フェアを開催しているわけではなく、普段の陳列の様子です
写真に写っているのは、全部東野圭吾の韓国語翻訳書です。撮影したのは町の小さな書店。東野フェアが開催されているわけではなく、いつもの陳列の様子です

韓国旅行で初めて現地の書店を訪れた方から、日本の作品の翻訳書が随分たくさんあって驚いたという声をよく聞きます。規模の大きい書店なら、翻訳書を扱うエリアに日本の翻訳書専用コーナーがあることもありますし、そうでなくとも、人気書籍の棚に韓国の作品と並んで陳列されていることは珍しくありません。

それだけ日本の書籍は注目されているわけですが、とりわけ小説の人気は高く、特定の作家の次作を心待ちにするファンが少なくありません。

では、日本で新作が出版されると同時に翻訳本の出版が期待される、韓国で超人気の作家は誰でしょうか。
 

韓国でも不動の人気を誇る、東野圭吾

韓国で圧倒的な人気を誇る日本人作家といえば、何といっても東野圭吾です。その人気ぶりは書店に行けばすぐにわかるはず。彼の作品は、どの書店に行っても最も目立つゴールデンゾーンに陳列されているからです。

教保文庫(※)の小説専門ポッドキャスト「浪漫書店」が発表した「2007~2016年までの間で最も愛された小説」では、日本小説部門で『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が1位に選ばれています。さらに、上位30冊のうち、『容疑者Xの献身』『ラプラスの魔女』など、彼の作品だけでなんと8冊もランクインするという快挙を成し遂げました。

2017年には、教保文庫ベストセラー集計史上初の5年連続総合ベストセラーTOP10入り、2020年には『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』が、読書プラットフォーム「ミリーの書斎」でベスト2に選ばれるなど、彼の作品はとにかく「超」がつくほどの人気。他にも、「最も愛される海外の小説」1位、「全国の図書館で一番よく読まれている本」1位など、とてもここでは書ききれないほどたくさんの華々しい栄冠に輝いています。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、2018年に韓国国内累計販売100万部を突破していますが、韓国の人口が約5000万人であることを考えると、この数字は驚異的な売り上げといえます。この作品は、これまでも売り上げ新記録を達成するたびに特別装丁版がお目見えしファンの心をくすぐってきましたが、現在は100刷記念エディションが店頭に並んでおり、これがまた好評。

通常版とは少し趣が異なるかわいらしいデザインに、シールとフォトカードがセットになった豪華版で、既に1冊持っていても、この特別エディションを購入したという東野ファンも少なくないとか。「好きな日本の小説」としてこの作品を挙げる人も多く、東野作品の中でも抜群の人気を誇っています。
 

熱烈なファンが多い村上春樹

さて、日本での人気ぶりをそのまま韓国に移したような作家をもう1人紹介すると、「やっぱり!」の声が聞こえてきそうですが……ビンゴ! 村上春樹です。

韓国にもハルキストの集まりや、村上春樹の小説専門の読書会があるほど熱烈なファンがたくさんおり、翻訳本が出版されるとすぐに各種メディアで取り上げられます。読書ブロガーたちがこぞって書評を書き、書店ではベストセラーコーナーを賑わせ、とにかく大きな話題になる作家です。

前述の小説専門ポッドキャスト「浪漫書店」が発表した「2007~2016年までの間で最も愛された小説」日本小説部門では、村上春樹の『1Q84』が2位。さらに、上位30位以内に『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』『ノルウェイの森』『女のいない男たち』の計4作が入っています。

2017年には、教保文庫が発表した「今年一番売れた日本の小説」を始め、多くの書店の売り上げランキングで『騎士団長殺し』が1位となり、春樹旋風を巻き起こしました。2019年、インターネット書店アラジンによる「過去20年間自社で最も売れた作家の順位」では、村上春樹が2位に(1位はハリーポッターシリーズのJ.Kローリン)。この結果だけ見ても、春樹人気の凄さがわかりますね。

2020年11月26日には新作『一人称単数』の翻訳本が出版されると同時に、ベストセラー入り。現在も書店に行くと目立つ場所に陳列されており、多くの人が手に取る様子をみかけます。

その他、奥田英雄『空中ブランコ』は2007年に翻訳本が出ましたが、現在も売り上げ好調なロングセラー日本小説の代表格。宮部みゆき『火車』『模倣犯』、湊かなえ『告白』、近代文学では川端康成『雪国』や、太宰治の『人間失格』なども広く読まれています。


 

児童文学も人気!

日本では意外と知られていませんが、日本の有名な絵本の多くが韓国で翻訳出版されていますし、児童文学作品もとても人気があります。
 

ユーモアあふれる作品で人気のトロル

トロルの『おしりたんてい』シリーズは、2016年に韓国で出版されてまもなくベストセラー1位に。2020年には累計販売部数200万部(読み物10冊、絵本6冊、アニメーションコミック3冊)を突破し、小学生の間で大人気です。2019年にはテレビアニメも放送が開始されましたが、こちらもあっという間にキッズチャンネル分野の視聴率1位に。

オンライン書店YES24の「2020年児童文学および青少年文学分野のベストセラー」では、数ある韓国の作品群に食い込み、5位にランクイン。グッズも人気で、新学期にはおしりたんていやブラウンのキャラ入り文具が飛ぶように売れます。ユニークなキャラクター設定とゲーム感覚で楽しめる推理が、韓国の子どもたちからも支持されているようです。
 

ふしぎな世界観が魅力の作品、廣嶋玲子

また、廣嶋玲子の『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』シリーズも女の子を中心に大人気で、学校の図書館にも置かれています。新しい作品が発売されるたびにベストセラー入りしており、累計販売部数40万部を突破しています。

オンライン書店YES24の「2020年児童文学および青少年文学分野のベストセラートップ10」では6位にランクイン。『十年屋』シリーズ『秘密に満ちた魔石館』なども好評で、書店の児童文学書コーナーに行けば、これらの作品が平積みされている様子を見ることができます。
 

(※)韓国国内、最大手の書店。出版市場の約25%を占めるといわれており、教保文庫の販売部数や人気ランキングは、出版業界全体の動向指数として参考にされることもある。